SIRVA(シルバ)とは

SIRVAは、Shoulder Injury Related to Vaccine Administrationの略でワクチン接種後の合併症です。ワクチン接種に関連した肩関節障害と訳され、ワクチン接種後に生じる肩の急性炎症で、肩の疼痛の持続・可動域制限(腕が上がらなくなる、後ろに回らなくなる)が発生します。ワクチン筋肉注射後、接種部位の痛み、腫れ、筋肉痛、関節痛は通常2、3日で軽快していきます。長くても2週間以内に軽快することがほとんどです。しかし、そのような痛みが3ヶ月以上持続し、慢性疼痛に移行することがあります。

 

SIRVA(シルバ)はなぜ起こるのか

筋肉注射の手技により三角筋(肩の筋肉)の深い部位に認める滑液包(関節の近くにある液体で満たされた袋:三角筋下滑液包と呼ばれます)へのワクチンの不適切な注入によると考えられています。医療機関は新型コロナウイルスを押さえ込むために、ほぼ全国民に三角筋筋肉注射を行うという、いままで経験したことのないミッションを行なっているわけですが、このような有害事象が発生してしまっていることも事実です。

SIRVA(シルバ)によって引き起こされる「モヤモヤ血管」とは

炎症が起きている部位には、その修復の過程で血管が増えます。痛みの原因部位にできてしまう異常な血管が、血管造影画像ではかすんでぼやけて見えるため、この新生血管をわかりやすいように“モヤモヤ血管”と呼んでいます。モヤモヤ血管のそばには病的な神経も増殖していることが分かっています。これらが痛み信号を発するほか、病的血流が増えることで局所の組織圧が高まることなどにより、長引く痛みが引き起こされると考えられています。一般に、40歳以上になるとモヤモヤ血管を自然に減らす力が衰えてくるため、長引く痛みが生じやすくなります。

 

運動器カテーテル治療の有効性

手首や肘、足の付け根の血管から太さ0.6mmほどの細長いチューブ(これをカテーテルと言います)を動脈の中に進めていき、痛みのある場所に薬(塞栓物質)を投与します。一時的な塞栓効果であるため、正常な血管は一時的に流れが悪くなることがあっても自然と再開通しますが、病的な血管は正常な血管とは構造が異なり脆弱であるため、一時的塞栓物質であっても投与により退縮していきます。このように血管構造の違いを利用して痛みのある部位を治療していきます。体表面から注射をするよりも、直接的にモヤモヤ血管に作用しますから非常に強力な治療効果が期待できます。また、注射が困難な部位においても、正確にカテーテルを導くことにより、安全かつ確実に薬を届けることができます。繰り返し注射を続けると、それだけ組織を傷つけることになりますが、カテーテル治療では皮膚や筋肉、腱などの損傷を避けることができます。

治療費用について

当院のカテーテル治療は全て自費診療(保険適用外)となります。

片側295,000円(税込324,500円)

 

SIRVAに関する動画解説

 

Q SIRVAは稀なことですか?

SIRVAという概念は、新型コロナウイルスワクチン接種以前から存在していたものですが、明らかに新型コロナウイルスワクチン接種開始後にご相談いただく方が増えています。割合などは今後明らかになっていくと思いますが、稀なことではありません。最近では、帯状疱疹ワクチン後のSIRVAについてご相談いただく方も増えています。一定の頻度で起こることですが、過剰に心配したり接種事態を否定するのではなく、そのメリット/デメリットを正しく理解したうえで受けていただき、不幸にも起こってしまった副反応/後遺症については適切に対処していくということが重要だと思います。

Q 私が受けたのは新型コロナウイルスワクチンではなく、帯状疱疹ワクチンですが、帯状疱疹ワクチン接種後にもSIRVAは起こるのですか?

帯状疱疹ワクチン接種後にも起こります。他に子宮頸がんワクチン接種後などの報告もあります。肩に筋肉注射により接種するワクチンにおいてそのリスクがあるとお考え下さい。

Q 受診した医療機関では五十肩と言われSIRVAについて聞いても首を傾げられました。

新型コロナウイルスワクチン接種という国の一大事業により、ワクチン接種後の肩の痛みを訴える方が実数として増えたことでだいぶ認知されるようになってきましたが、まだまだ医療関係者においても浸透していないのが実情です。症状や検査所見は五十肩と類似していますので、そのように説明されることも少なくありません。

Q 五十肩と言われ痛み止めやリハビリをすすめられましたが大丈夫ですか?

今のところはSIRVAに特化した治療方法があるわけではありませんので、一般医療において五十肩と対処法が大きく異なるわけではありません。どちらの疾患も腱板断裂などの大きな組織損傷はありませんので、治療としては炎症を鎮めて痛みを改善させること、およびリハビリを通じて、拘縮予防や運動機能の維持・向上を図ることに主眼を置かれます。より積極的に炎症を強力に鎮める治療方法として、モヤモヤ血管(病的新生血管)に対するカテーテル治療(微細動脈塞栓術)があります。

Q 五十肩とSIRVAはどんな違いがありますか?

成り立ちは全く異なるものの、どちらも検査所見や症状が類似しています。『夜間痛』『可動域制限』『経時的な症状の悪化』が五十肩の特徴ですが、SIRVAの場合、夜間痛や可動域制限はみられるものの、特に滑液包に誤って薬液が注入されたことが原因で起こる場合は、強い炎症を反映して比較的早期から強い痛みを伴います。一方、注射部位の問題ではなく薬剤に対する反応が同様の肩関節周囲炎を引き起こしている場合は、五十肩に類似した経過となることもありますが、可動域制限がそれほど高度でなくても、(人によっては全く支障なく動かせていても)強い不快感が生じるなど症状の幅が広い印象があります。また、脇や腕の症状を強く感じている方も多いです。一般的な対処法に大きな違いはありません。モヤモヤ血管に対するカテーテル治療の場合も、モヤモヤ血管の見え方などに違いがあることもありますが、基本的には同様の治療を行います。いずれも複数回の治療を要することは稀であり、有効性が高く、再発はほとんどありません。

Q モヤモヤ血管に対する運動器カテーテル治療は、新型コロナウイルスワクチン接種に係る健康被害救済制度について適用されますか?

自費診療は全般的に適用されないようです。愛知県におきましては、自治体からも実際にそのように通達がありました。

Qまだ痛みが残っているのですが、追加接種は反対の肩にした方が良いですか?

接種後に痛みが生じてしまうことは常に一定の確率で起こり得ることです。まだ痛いのに反対の肩まで痛むようになると、両腕が不自由になり大変辛いと思います。一方、まだ痛みが残っているということは一定の炎症が残っている可能性があるため、ワクチン接種によりそれらが賦活化されてさらに痛みが強くなってしまうということも起こりえます。両側上腕以外の選択肢として、お尻(臀部)に射つという方法もあります。これらのことをよくお考えいただいたうえで、最終的には患者様ご自身の判断で決めていただくよう当院ではお話しています。

Q運動器カテーテル治療後(微細動脈塞栓術)に改めてワクチン接種を受けた場合、もうSIRVAにはなりませんか?

カテーテル治療後は血管の中から直接アプローチしますので、自然の経過よりも病的新生血管を大幅に減少させます。放置しておいた状態で追加接種を受ける場合と比較すると、SIRVAになるリスクは大幅に減らせるとは思いますが、病気の成り立ちを考えると、やはり接種機会毎に一定の発症リスクがあると言わざるを得ません。

Q SIRVAは肩の痛みだと思っていましたが、ワクチン接種後に肩だけでなく、首や肩甲骨、脇や腕、手首などにも痛みが出ます。これはSIRVAとはまた原因が異なるのですか?

SIRVAの診断に至る方が、脇や上腕、前腕、手首にも広く強い痛みを感じているということは少なからず経験します。肩関節に起きた激しい炎症が波及した結果として脇や上腕に痛みを強く感じるということはよく経験しますが、その場合は肩関節に対する運動器カテーテル治療を行えば事足ります。一方、ワクチンの薬液に対する異常な免疫反応が上腕だけでなく前腕や手首に及んでいる場合があります。その場合は、それぞれの疼痛部位に対する直接の治療も検討されます。首や肩甲骨の痛みについては、元々中等度以上の首肩こりや頸椎症を抱えている方が多く、ワクチン接種によりそれらの慢性疼痛が助長される、あるいはSIRVAの強い痛みによりストレスホルモンが過剰に分泌されたことで、首肩の高度の筋緊張が持続することなどにより起こっていることがあります。その場合、首肩こりの部位に対する治療を併せて行うことがあります。

Q SIRVAと診断されましたが、肩というよりも腕が特に痛いです。肩の治療だけで治るのでしょうか?

上腕の症状であれば、多くの場合肩関節の強い炎症の影響であり肩の治療で改善が十分期待できます。前腕に及んでいる場合は、頸椎症など肩関節以外の原因の可能性も検討することになります。

鴨井院長が本当に伝えたいこと

SIRVAによる痛みは五十肩よりも強い痛みとなることも多く、症状の感じ方に幅があり、可動域は問題なくても強い不快感があるということもあります。また、ワクチンの薬液に対する異常な免疫反応が起こった結果、肩関節周囲に留まらず、首や肩甲骨、前腕や手首にまで不調を感じることもあります。いずれにしても、予防のために受けたはずのワクチン接種により日常生活を破壊されるほどの痛みが長引くと、心理的な悪化も強くなりますが、見た目にはわからないため周囲の理解が得られないことにより尚一層苦しめられることにもなります。そうした状態であっても、モヤモヤ血管(病的新生血管)に対する運動器カテーテル治療(微細動脈塞栓術)は大変有効です。強い炎症を反映して、モヤモヤ血管も豊富に描出されることが多いのですが、治療後は間違いなく症状は緩和されます。変な言い方ですが、悪い方が症状の改善を実感しやすいということもあるかもしれません。但し、疼痛過敏を内在しているためか完全にスッキリ治るのには少し時間を要する場合もあります。一般診療で、中々良くならず生活の質を大幅に落としていたり仕事の生産性を低下させてしまっていたりする状況が長く続くようでしたら、思い切ってカテーテル治療を受けていただくことをおすすめします。少しでも早く、元の生活を取り戻していただきたいと思います。

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