その他:帯状疱疹後など 【60代:女性】筋力トレーニングでいつまでも取れない痛みが発生!瘦せ型の女性に生じた大腿における筋・筋膜性疼痛症候群 2023.02.22 鴨井院長による動画解説 受診までの経過 筋力トレーニングがきっかけで、1年3ヶ月前から両側大腿に広範囲に痛みを感じるようになりました。軽い動作では問題ないものの、階段や坂道、30分以上の立位などで脚に力を入れると痛みが増し、しばらくジンジンと痛みを感じていました。整形外科でレントゲンなど一通りの検査を受けましたが、股関節や膝関節に異常はありませんでした。鍼やマッサージなどは効果がなく、特別な施術を受けられるようなリハビリトレーニング施設にも通いましたが、8回の施術を受けて筋膜リリースなどその度に異なることをしてもらいましたが改善しませんでした。他の治療方法を求めて当院を受診されました。 診察時の所見 急激な体重減少はないものの、身長160cm, 体重39.0kg, BMI 15.2kg/㎡と痩せ型であり、特に大腿においての筋肉の萎縮が目立ちました。エコー検査ではやはり変形性膝関節症の所見は認められず、膝蓋骨の大腿四頭筋腱付着部などにも明らかな器質的異常は認められませんでした。一方、筋・筋膜の線維化はかなり目立っていました。下肢領域の痛みの原因となりやすい股関節や膝関節由来の痛みではなく、大腿における筋・筋膜性疼痛症候群と判断されました。強い炎症が背景にある病態ではないものの、一定の慢性炎症や血流障害が関与しているものと考えられたため、微細動脈塞栓術(運動器カテーテル治療)を受けていただきました。 治療の所見 膝関節を取り巻く血管や、大腿に分布する血管を探っていきましたが、変形性膝関節症の所見とは様相が異なり、主に筋肉に分布する枝にてモヤモヤ血管(病的新生血管)が目立つ印象でした。治療中に一定の再現痛(治療時に普段の痛みと同様の感覚が得られること。責任血管の同定のための参考にすることがあります。)を認めました。やり残しのないように該当するすべての血管を探索して治療を行ったうえで終了しました。 治療後の経過 治療後2週間ではまだ目立った変化はありませんでしたが、当院を受診してちゃんと診てもらえたということでだいぶ明るい気持ちになれていると言われました。慢性疼痛と相対していくうえで、心理的な改善は大変重要です。治療後1か月、3割程度症状が改善しました。以前は食料品を買いに出かける程度でしたが、洋服を見に行っていつの間にか長時間が経過しているということもみられるようになりました。大腿の前面および背面でピリピリするような感覚がありましたが、自身では治っていく過程の好転反応ではないかと前向きにとらえているとのことでした。治療後1か月半の時点で一度ご来院いただきましたが、5千歩以上の歩行ができるようになっていました。ハイドロリリース注射を追加しましたが、治療後2か月時点では痛みが当初の半分以下となり、以前の日常生活を取り戻せるようになりました。考え方も随分変わりよかったと話されました。スニーカー以外の靴も履けるようになりました。ある程度落ち着いたため、ご遠方ということもありしばらく様子を見ることとなりました。 本症例のような非特異的な下肢の痛みというのは画像検査では異常を捉えることが難しく、医療機関では頭を悩ませてしまいます。『特段悪いところはないですよ』と言われてしまうこともあります。実際に強い炎症や損傷が生じているわけではないのですが、この方の場合は、大腿の筋肉が萎縮していて非常に痩せておられるという点が重要です。こうした場合、トレーニングによる負担を受けやすいですが、痛みに対する抵抗力も低下してしまっています。筋肉が痩せると関節や体幹の負担が増しますが、そもそも筋肉自体から痛みに対抗する物質が出ているため、痩せることで痛みに弱くなってしまうのです。同じ程度の痛み信号でも強く感じやすくなるのです。さらなる症状の改善や再発予防のためには、食生活を整えて十分な睡眠をとること、また適度な運動をすることにより筋肉量を増強していくことが大切です。筋肉は例え高齢となっても鍛えれば維持・増強させることが可能であることがわかっています。 筋膜性疼痛症候群の詳しい病状説明はこちら 【50代:女性】新型コロナウイルスワクチン接種後に肩の痛み(SIRVA)と、全筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群及び線維筋痛症の合併症例 前の記事 【50代:女性】新型コロナウイルス感染後遺症(Long COVID)に新型コロナウイルスワクチン接種後遺症(SIRVA)を合併した症例 次の記事
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