股:変形性股関節症など

【40代:男性】ボールを蹴ると下腹部や鼠径部が痛い!社会人サッカー選手に生じたグロインペイン症候群

鴨井院長による動画解説

受診までの経過

半年前に、当初は試合前のアップの際に強くボールを蹴ると下腹部に鋭い痛みを感じるような状態でした。その後もプレーを続けていたら鼠径部にも痛みが出るようになり、やむなくサッカーを休むこととしました。接骨院ではグロインペイン症候群だと言われ、マッサージ・ハイボルテージ・超音波治療などを続けていましたが2ヶ月休んでもいっこうに改善されずに悩んでいました。日常生活では痛みはなく特に支障はないのですが、軽く走るだけでも同部位に痛みが出てしまうといった具合でした。足だけでなく下腹部から鼠径部の力をこめてしっかりと蹴りこむように蹴っていて、下腹部が痛みだしたときに休まずやり続けたのが良くなかったのかなと言われました。

診察時の所見

鼠径部は特に押して痛いということはなく、より内側に痛みがありました。股関節の動きは特に問題ありませんでした。レントゲンでは恥骨結合が開大傾向でしたが、恥骨周囲に圧痛はありませんでした。日常生活に支障をきたすほどの重症状態には至っていないものの、特徴的な症状や身体所見からグロインペイン症候群が強く疑われました。治療適応と判断し、微細動脈塞栓術(運動器カテーテル治療)を受けていただきました。

治療の所見

下腹部および鼠径部~恥骨周囲に関係する血管をそれぞれ治療しました。特に閉鎖動脈造影ではモヤモヤ血管が造影剤の濃染像として明瞭に描出されました。治療後は画像上速やかに消失しました。

治療前画像:損傷を受ける、あるいは繰り返しのストレスにより発生した異常な新生血管
治療後画像:カテーテルを用いて塞栓物質を血管内に投与し新生血管を塞いだ状態
治療費用:税込357,500円〜434,500円
主なリスク・副作用等:針を刺した場所が出血により腫れや痛みを生じたり、感染したりすることがあります(穿刺部合併症)。造影剤によるアレルギー(皮膚のかゆみ・赤み・息苦しくなるなどの症状)が出ることがあります。

治療後の経過

まず鋭い痛みが少し緩和されてきて、1ヶ月を過ぎてくるとそれが無くなりました。腹部の不快感も改善してきて、左側の痛みはほとんどなくなりました。サッカーはプレーできそうな感覚はあるものの、自重していました。治療後2ヶ月半に差し掛かる頃くらいから運動を再開し、サッカーも始めましたが大丈夫でした。日に日に良くなってゆき腹部の不快感も完全に消失しました。走る、蹴る、止まるといった動作が支障なくできるようになりました。フィールドに完全復帰を果たし、その後も順調に経過されているようです。グロインペイン症候群はサッカー選手が引退を決断するきっかけになる疾患の一つですが改善されて本当に良かったです。治療後早期の大事な時期に、復帰を焦らずに安静にしていただけたことも良い結果につながったのだと思います。少しでも長くプレーを続けられることを願ってやみません。

グロインペイン症候群、鼠径部痛症候群の詳しい病状説明はこちら

 
 

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