足:アキレス腱炎、足底筋膜炎、踵骨棘など

【70代:女性】感染を契機に発症した両肩関節周囲炎および右膝痛(肩関節周囲炎、腱板炎、変形性膝関節症)

鴨井院長による動画解説

受診までの経過

4ヶ月前、高熱・嘔吐などの症状が2-3日続きました。身体中に痛みがあり力が入らなくてベッドから起き上がることもできないほどでした。急性胃腸炎と診断され、これらの症状は自然軽快しましたが、その後気づくと両肩が痛くなっていました。右膝にも違和感が生じていて正座ができなくなっていました。痛み止めや湿布などを処方されるも改善せず、身体が縛られているような感じがしてお尻に手を回すことができないなど肩関節の可動域も悪化していました。診断的治療目的でステロイドの内服もしましたが、効果はありませんでした。当院の治療を知り受診しました。

診察時の所見

両肩とも可動域制限がありましたが、特に左肩関節では、水平まで腕を挙げることができず(外転60度)反対の肩に手を回すことができないなど比較的高度の可動域制限を認めました。レントゲンでは特に異常所見はありませんでしたが、エコー検査をすると、両側とも強い炎症を反映した異常血流信号の増生や、上腕二頭筋長頭腱水腫、腱板の腫脹などを認めました。診断は腱板炎による両側肩関節周囲炎です。明らかに感染を契機としている点は通常の腱板炎や五十肩などとは異なりますが、いずれにしてもモヤモヤ血管(病的新生血管)に対する運動器カテーテル治療(微細動脈塞栓術)の適応と考えられました。次に右膝ですが、レントゲンでは変形性関節症の所見はありませんでしたが、膝蓋骨中枢側(大腿四頭筋腱付着部)にて骨表層不整および骨棘形成を認め、エコー検査では同部位にモヤモヤ血管を反映した異常血流信号も認められました。レントゲンではわからなかったような変形性変化もエコーでは認められました。以上より、早期の変形性膝関節症による炎症が感染を契機として助長された可能性が考えられました。正座ができないほどとなっており、併せて運動器カテーテル治療を受けていただきました。

治療の所見

肩関節において血管造影を行うと、肩甲上動脈にてモヤモヤ血管が濃染像として描出されました。他の複数個所の血管でも同様の所見を認めそれぞれ治療しました。首肩こりも強かったため併せて治療を行いましたが、ここでも深頸動脈造影にてモヤモヤ血管が豊富に描出されました。右膝ではより軽度でしたが、下行膝動脈、内側下膝動脈。外側下膝動脈などでモヤモヤ血管が描出されました。いずれも治療後は画像上速やかに消失しました。

治療後の経過

治療後、左上肢が少し重怠かったものの、翌日から少し楽になってきたため、痛み止めを減らすことができるようになりました。右膝に至っては、翌日から正座ができるようになりました。治療後2週間、ドライヤーを使うときには痛むもののかなり楽になってきました。その後も順調に経過し、治療後1ヶ月の確認時には肩・膝とも痛みがほぼ消失していました。運動も再開していました。一方、まだ左肩の可動域制限や、首肩こりは一定程度残っていました。治療後3ヶ月、首・肩・膝とも痛みは完全に消失しました。正座も問題なくできていました。両肩関節の可動域もだいぶ改善してきましたが、特に左では後ろに手を回す動作がまだ制限されていました。治療後6ヶ月、可動域に関してはまだ完全には回復していませんでしたが、運動もできており徐々に改善することが見込まれました。痛みは引き続き全く無いとのことでした。症状は五十肩に類似していましたが、発症は明らかに感染が関わっており、非典型的な肩関節周囲炎でした。ステロイドによる診断的治療が試みられたことも理解できるような病態でした。胃腸炎軽快後、4ヶ月以上にわたり持続しており、もちろん肩関節や膝関節の感染症ではありません。元々くすぶっていたような腱板炎や変形性膝関節症による慢性炎症が感染を契機に増悪したのではないかと考えられます。肩関節、膝関節ともそもそも微細動脈塞栓術の有効性が高い部位ですが、感染を契機とした不調にはモヤモヤ血管が関わっている要素が強く、より治療に適していた病態であったと言えます。改善されて何よりでした。

腱板炎・変形性膝関節症の詳しい病状説明はこちら

 

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