足:アキレス腱炎、足底筋膜炎、踵骨棘など 【40代:男性】両膝に生じた重症の難治性痛風関節炎に対するモヤモヤ血管治療(痛風関節炎、痛風発作、膝痛、足部痛) 2025.05.02 鴨井院長による動画解説 受診までの経過 足趾の痛風発作にこれまで繰り返し悩まされてきましたが、2ヶ月前に初めて両膝の激しい痛みに襲われました。やはり痛風の診断で、鎮痛薬及びコルヒチンの内服と、ヒアルロン酸注射による治療を続けました。水も溜まっていたので何度か水も抜きました。激しい発作はおさまりましたが、いつまでも痛みがとれず、特に夜間痛が強いため寝られない状況が続いていました。当院の治療を知り受診されました。 診察時の所見 強い疼痛のためか、両側とも歩容が不安定でした。痛みは膝全体に及んでおり、圧痛も全周性に見られました。レントゲンでは関節腔の狭小化や骨棘を認めるなど中等度以下の変形を認めました。両側扁平足でした。エコー検査では、左優位に多量の膝蓋上嚢水腫を認めました。周囲に炎症に伴う異常血流信号増強も認められました(モヤモヤ血管を反映)。異常血流信号は膝蓋下脂肪体でも豊富に認められました。軽度の変形性膝関節症の所見は認められるものの、それに比べて非常に強い炎症を両側全周性に伴っており、臨床経過と総合して両膝痛風発作後遺症と判断しました。モヤモヤ血管(病的新生血管)に対する運動器カテーテル治療(微細動脈塞栓術)の良い適応であり治療を受けていただきました。左足首および左足部の痛みもあることから併せて治療をご希望されました。 治療の所見 両膝関節を取り囲むように治療を行いました。血管造影を行うと、全ての対象血管にてモヤモヤ血管が濃染像として豊富に描出されました。(写真では、下行膝動脈、中膝動脈、外側上膝動脈、内側下膝動脈、外側下膝動脈の各血管造影を供覧しています)治療後は画像上速やかに消失しました。続いて左足関節および左足部の治療を行いました。ここでも疼痛部位に一致して、モヤモヤ血管が旺盛に増生していました。写真では前後脛骨動脈造影における足根骨の関節部に増生したモヤモヤ血管を示しています。同様に治療を行いました。 治療前画像:損傷を受ける、あるいは繰り返しのストレスにより発生した異常な新生血管 治療後画像:カテーテルを用いて塞栓物質を血管内に投与し新生血管を塞いだ状態 治療費用:税込324,500円 主なリスク・副作用等:針を刺した場所が出血により腫れや痛みを生じたり、感染したりすることがあります(穿刺部合併症)。造影剤によるアレルギー(皮膚のかゆみ・赤み・息苦しくなるなどの症状)が出ることがあります。 治療後の経過 治療後3日くらいから改善してきました。治療後2週間、安静時の痛みは無くなりました。歩行時はまだ両膝とも痛みがあり、耐え難い痛みは改善しているものの鈍痛が続いていました。治療後1ヶ月、歩容が劇的に改善し、健常な状態と変わらない歩き方で診察室にも入室されました。日中は痛みが気にならなくなりましたが、起床後2時間くらい痛みがありました。エコーで確認すると、まだまだ膝の水は溜まっていました。治療後1ヶ月半、水腫が大幅に減少してきました。治療後2ヶ月、右膝の痛みは消失しました。水腫も消失しました。左膝と甲の痛みはまだ残っており注射加療を行いました。その後、ほとんど水が溜まることは無くなり、治療後4ヶ月以降は左膝の痛みもほぼ認められなくなりました。一方、右膝の鈍痛を再び感じるようになり、治療後7ヶ月の経過でもまだ完治には至っていません。エコー検査では、膝関節外側において異常血流信号が目立つものの、水腫はわずかに見られる程度でした。追加カテーテル治療による完治が見込まれますが、ご希望に沿いヒアルロン酸注射等で様子を見ているところです。急性痛風関節炎(痛風発作)は第一中足趾節(MTP)関節、足関節に好発します。本症例ではそうした部位にこれまで発作を繰り返してきましたが、今回両膝関節に激しい関節炎を起こしました。いずれも強い炎症が特徴であり、通常の薬物治療にて改善が芳しくない場合には、モヤモヤ血管に対する微細動脈塞栓術を検討するとよいと思います。血管造影では旺盛に増生したモヤモヤ血管が豊富に描出されます。強い炎症に対する治療効果を反映して、治療後は早期から改善されることが多いですが、再発予防のためには尿酸値のコントロール、生活習慣の改善が重要です。 痛風の詳しい病状説明はこちら 【80代:女性】高齢維持透析患者に生じた変形性膝関節症に対するモヤモヤ血管治療 (維持透析、変形性膝関節症) 前の記事 【70代:女性】感染を契機に発症した両肩関節周囲炎および右膝痛(肩関節周囲炎、腱板炎、変形性膝関節症) 次の記事
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