股:変形性股関節症など

【10代:男性】高校1年生のバスケットボール選手を1年以上悩ませた股関節痛(グロインペイン症候群;鼠径部通症候群)(グロインペイン症候群、鼠径部通症候群、バスケットボール)

鴨井院長による動画解説

受診までの経過

高校1年生です。1年前から左股関節が痛むようになりました。元々、脊椎側弯症があるためそのせいなのか、あるいは続けているバスケットボールのためかと思っていました。整形外科では、変形性股関節症と診断を受けていました。このような状態でも治療が可能なのかというご相談で当院を受診されました。

診察時の所見

側弯症があるということであり、まず腰の動きなどチェックしましたが、動作に問題なく、疼痛の誘発も認められませんでした。股関節では左股関節外旋時の動きが硬く、鼠径部に疼痛が誘発されました。鼠径部の圧痛も左側優位に認められました。内腿に疼痛はみられないものの、恥骨周囲には圧痛および自発痛がありました。以上のように、左恥骨~鼠径部~大腿骨上方(臼蓋部)の領域に自発痛および圧痛がみられる状態でした。左股関節のエコー検査では、変形性関節症の所見はみられず、レントゲンでも明らかな異常はありませんでした。
以上より、グロインペイン症候群(鼠径部痛症候群)と診断されました。同疾患はモヤモヤ血管(病的新生血管)に対する運動器カテーテル治療(微細動脈塞栓術)の治療適応ですので、治療を受けていただきました。

治療の所見

複数個所の治療を行いましたが、中でも、閉鎖動脈、および内側大腿回旋動脈の血管造影でモヤモヤ血管が濃染像として明瞭に描出されました。グロインペイン症候群では、ほとんどの症例でこのようにモヤモヤ血管が明瞭に描出されます。治療後は画像上速やかに消失しました。

治療後の経過

しばらく痛みが続いていましたが、治療後2週間を過ぎる頃から一気に良くなり、治療後3週間の受診時にはほとんど痛みが消失していました。ランニングは控えているものの、シュート練習を1時間30分行っても問題ありませんでした。ウエイトトレーニングも続けていました。診察では、左股関節外旋時の痛みが消失し、動作も改善し、圧痛も消失していました。非常に経過良好ではありましたが、もう2週間ほどは運動を控えていただき、その後徐々にランニング等を再開していただくこととしました。幸い再発することなく経過し、治療後3ヶ月時点の再診では、ランニングや切り返し、ダッシュも問題なく、バスケットボールはフルにプレーできるようになっていました。グロインペイン症候群はカテーテル治療が非常に有効ですが、他疾患に比べると再発リスクは高く、復帰にあたっては慎重にすすめていく必要があります。本症例では、10歳代の成長期であり、治療後の組織修復も非常に早く進んだものと思われます。

グロインペイン症候群では痛みが改善してすぐに無理をしないことが肝要です。その間何もできないわけではないので、負担をかけないようなウエイトトレーニングやランニング・キック動作以外のメニューをこなしながら焦らず回復を待っていただくようお話します。
我慢する、辛抱する、と考えるよりも、その間に他の部位を強化すると前向きにとらえていただくとよいと思います。元気はつらつ、思う存分にプレーできるようになり本当に良かったです。

グロインペイン症候群(鼠径部痛症候群)の詳しい病状説明はこちら

 
 

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