足:アキレス腱炎、足底筋膜炎、踵骨棘など 【70代:男性】重粒子線治療後に右下肢痛から歩行困難に・・10年間苦しんだ放射線治療後遺症に対するモヤモヤ血管治療(重粒子線治療、放射線治療後遺症、坐骨神経障害) 2024.10.30 鴨井院長による動画解説 受診までの経過 21年前に直腸がんの治療を受けました。その後、11年前に骨盤転移が見つかったため、重粒子線治療を受けました。しばらくは大丈夫でしたが、1、2年してから足の指先まで痛みを生じるようになりました(そのリスクについては、重粒子線治療を受ける際に予め説明は受けていました)。歩行時に一番痛く、ゆっくりとしか歩くことができませんでした。安静時にも常にジンジンと痺れていました。3年前に整形外科で足根管症候群の治療を受け、しばらく回復したものの、再び右足底、踵の痛みも生じるようになりました。右足首あたりが引っ張られるようで、足背・足底とも常に一定の痺れがある一方で、この5年間で腰臀部の痛みは出ていませんでした。難治の経過であり、いくつかの病院に治療を断られましたが、当院の治療を知りご相談いただきました。尚、重粒子線治療により癌は治癒していました。 診察時の所見 きっかけは骨盤領域への重粒子線治療であり、まずは腰臀部の診察から始めました。しかしながら、右足の感覚障害による浮遊感があるため、腰の可動域を確認する動作は困難でした。明らかに、全ての動作で中等度以上の可動域制限があるほか、右側屈・回旋動作などにより痺れの増強を認めました。腰臀部の各所で、いくつかの圧痛を認めたほか、右股関節の外旋動作では足のしびれが増強しました。症状からは足部での慢性炎症や末梢神経障害というよりも、腰臀部由来の要素が強い印象でした。レントゲンでは、腰椎側弯や椎体変形を伴う、高度の腰椎変形を認めました。股関節腔も狭小でした。 難治の状態であり、当院としては最大限の治療を行いたいという考えから右腰臀部および右足部両方への病的新生血管(モヤモヤ血管)に対する微細動脈塞栓術(運動器カテーテル治療)を実施することとしました。 治療の所見 右腰臀部および右足部の各血管に対して細小径のカテーテルをすすめ薬液を投与しました。 腸骨動脈の拡張・屈曲・蛇行が著しく、カテーテル操作に難渋しましたが、種々の工夫を行うことで、何とか治療を完遂できました。写真では、腰動脈、上殿動脈、腸腰動脈、外側仙骨動脈の各血管造影を示しています。(骨盤領域はモヤモヤ血管が明瞭には描出されにくい部位であり、モヤモヤ血管画像は掲載しておりません) 治療後の経過 治療後2週間くらいから改善してきて、動かなかった足の趾先が動くようになりました。趾の間隔が空くようになりました。それに伴い、浮遊感が緩和されました。土踏まずも少し楽になり、踵の痛みも減り歩きやすくなりました。右足首も動くようになりました。右腿を挙げたときに付け根が痛むものの、歩幅が広がりました。一方、右足の痺れは変わりませんでした。治療後2ヶ月、右腿が痛みなく挙げられるようになりました。土踏まず~踵の痛みはさらに改善しましたが、痺れは残っていました。もう少し改善したいという希望から、治療後4ヶ月の時点で2回目のカテーテル治療を受けられました。治療後2ヶ月、右下肢の痛みはさらに改善し、膝を曲げることができるようになりました。立ったままズボンを履けるようにもなりました。痺れ以外は大幅に改善しました。右足首の浮腫みもとれました。一定の痺れは残っているものの、その後も増悪することなく経過されています。 骨盤領域における重粒子線治療の後遺症として、坐骨神経障害が起こることがあります。本症例は変形性腰椎症も合併しており、より重篤な症状を呈していました。最終的に一定の痺れは残りましたが、痛みは動作は大幅に改善することができました。 坐骨神経痛の詳しい病状説明はこちら 【70代:男性】寝たきりの一歩手前・・腰椎ヘルニア手術後にも残った右下肢の痛みと痺れ・・対処法は?(腰椎椎間板ヘルニア手術後、坐骨神経痛、フレイル) 前の記事 【50代:男性】トライアスリートに生じた膝蓋腱炎(ジャンパー膝)に対するモヤモヤ血管治療(膝蓋腱炎、膝蓋靭帯炎、ジャンパー膝) 次の記事