膝:変形性膝関節症など 【70代:男性】急激に悪化した膝の痛みで歩けなくなり夜も寝られず水も溜まる・・ネフローゼ症候群を合併した変形性膝関節症の実例(変形性膝関節症、ネフローゼ症候群) 2025.12.01 鴨井院長による動画解説 受診までの経過 それまで痛めたことはなかったのですが、3ヶ月前から急に右膝が痛み始めました。整形外科を受診し、水を抜いてもらいヒアルロン酸注射を受けていましたが改善しませんでした。松葉杖を使うほどの痛みにもなり、安静時にも痛むようになりました。ついには夜間に痛みで目が覚めるほどになりました。鎮痛薬も効かない一方で、外科手術の適応ではないと言われ思い悩んでいたところ、当院の治療を知り受診されました。 既往疾患;ネフローゼ症候群 診察時の所見 杖歩行にて入室されました。レントゲンでは中等度以上(KL分類3相当)の関節変形を認めました。エコー検査では、膝蓋上嚢に中等度以上の水腫を認め、その周囲や滑膜組織には炎症によるモヤモヤ血管を反映した異常血流信号が豊富に認められました。変形性膝関節症の診断ですが、病状は重症でした。基礎疾患としてのネフローゼ症候群が少なからず影響を与え、炎症が助長されていることが示唆されました。非常に強い炎症が関与していることから良い治療適応と判断し、モヤモヤ血管(病的新生血管)に対する運動器カテーテル治療(微細動脈塞栓術)を受けていただきました。 治療の所見 血管造影を行うと、外側上膝動脈、下行膝動脈などでモヤモヤ血管が濃染像として描出されました。治療後は画像上速やかに消失しました。その他複数箇所の治療を行い終了しました。 尚、強い炎症を反映して、治療時の再現痛は強めでした。 *再現痛とは、薬液投与時に普段の痛みが一定程度再現される現象です。責任血管の同定のための参考とします。 治療後の経過 治療翌日から改善しました。治療後3週間では、ほとんどの痛みが無くなりました。肩関節の可動域も完全に回復し、バンザイもできるようになりました。半年間苦しんでいた痛みのあまりの回復ぶりに、『最初からここに来ればよかった』と話されるほどでした。エコーで確認すると、まだ石灰沈着については大きな変化はありませんでしたが、今後吸収されていくことも期待できます。非常に経過良好であったことから、終診となりました。石灰沈着性腱板炎は強い炎症を伴っていることが多く、その苦痛も五十肩以上になることが少なくありません。カテーテル治療は強い炎症にこそ、強い効果を発揮します。実際に、本症例では非常に早期から快復しました。罹病期間が長くなければ、石灰も吸収されて無くなります。 非常に良い適応疾患の一つですので、お悩みの方はぜひご検討いただくと良いと思います。 治療前画像:損傷を受ける、あるいは繰り返しのストレスにより発生した異常な新生血管 治療後画像:カテーテルを用いて塞栓物質を血管内に投与し新生血管を塞いだ状態 治療費用:治療する部位によって費用が異なりますのでこちらをご参照ください。 主なリスク・副作用等:針を刺した場所が出血により腫れや痛みを生じたり、感染したりすることがあります(穿刺部合併症)。造影剤によるアレルギー(皮膚のかゆみ・赤み・息苦しくなるなどの症状)が出ることがあります。 変形性膝関節症の詳細 【50代:男性】最初からここに来ればよかった・・ステロイド注射無効で半年間苦しんだ石灰沈着性腱板炎による肩の痛み(石灰沈着性腱板炎、肩関節周囲炎) 前の記事 【40代:男性】新型コロナウイルスワクチン接種後、3年に亘り続いたしつこい肩の痛み。石灰沈着性腱板炎後遺症に対するモヤモヤ血管治療(石灰沈着性腱板炎後遺症、SIRVA、新型コロナウイルスワクチン接種) 次の記事