膝:変形性膝関節症など

【70代:女性】半月板手術後に進行した変形性膝関節症(半月板手術、変形性膝関節症、膝蓋下脂肪体炎)

鴨井院長による動画解説

受診までの経過

きっかけはテニスでした。40年近く前に左膝を痛めて、半月板手術を受けました。40%程度の半月板を除去したそうです。以降も、一定の痛みはとれず経過していたため、テニスはやめて水泳をするようになりました。ところが、3ヶ月ほど前から両側とも膝の裏が痛くなってきました。入浴後や、朝起きてからストレッチおよび大腿四頭筋腱強化の体操をすると楽になりました。午前中は調子が良いのですが、午後になると痛みが強くなり、特に階段を降りるときに痛みました。右膝はまだ正座できていたのですが、左と同様にできなくなってしまいました。ご家族のすすめで当院を受診されました。

診察時の所見

レントゲンでは、それほど変形が進んでいるようには見えないものの、エコー観察を行うと、特に左膝の外側では、骨棘、骨表層不整、炎症に伴う異常血流信号の増生が認められました。右側は軽度、左側は中等度以上の変形性膝関節症と判断し、微細動脈塞栓術(運動器カテーテル治療)を受けていただきました。

治療の所見

診察日から1ヶ月後に治療を希望されましたが、幸い右膝は自然経過で治ってきたため、左膝のみ治療を行いました。血管造影を行うと、強い炎症を反映して、膝の内外でモヤモヤ血管(病的新生血管)が造影剤の濃染像として描出されました。特に変形がより進行していた外側部に該当する外側膝下動脈造影で豊富に認められました。また、前脛骨半回動脈造影では、膝蓋下脂肪体に一致して多量のモヤモヤ血管が確認され、同脂肪体炎も合併していることが裏付けられました。いずれも、治療後は画像上速やかに消失しました。

治療前画像:損傷を受ける、あるいは繰り返しのストレスにより発生した異常な新生血管
治療後画像:カテーテルを用いて塞栓物質を血管内に投与し新生血管を塞いだ状態
治療費用:税込324,500円
主なリスク・副作用等:針を刺した場所が出血により腫れや痛みを生じたり、感染したりすることがあります(穿刺部合併症)。造影剤によるアレルギー(皮膚のかゆみ・赤み・息苦しくなるなどの症状)が出ることがあります。

治療後の経過

比較的早期から改善し、2週間後にはすごく楽になったと言われました。治療後1ヶ月半、順調に回復し、左膝の痛みは忘れられるようになりました。注射加療なども不要であり、今後は再発予防に努めていただく方針です。半月板の手術については、近年の考え方ではできるだけ残すほうが良いとされています。以前は大きく除去していたことも多かったのですが、本来半月板はクッションの役割も果たしているため、除去することで膝関節に対する負担が増してしまいます。それにより、膝関節の変形が進行しやすくなってしまうのです。本症例でも、左膝において、より変形の進行が促進されていました。とはいえ、これまで40年近くに亘りよくもたせてきたと言えるかもしれません。カテーテル治療により痛みはほぼ消失しましたが、構造上、少しずつ負担が蓄積されていきますので、少しでも長く良い状態を維持できるよう、引き続き大腿四頭筋腱の強化や適正な靴・インソールの使用をおすすめしています。

変形性膝関節症・膝蓋下脂肪体炎の詳しい病状説明はこちら

 

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