顔:頭痛など

【30代:女性】長年の歯ぎしり・食いしばりから、ひどい顎関節症、首肩こりや耳鳴りも合併した症例(顎関節症、食いしばり、首肩こり、モヤモヤ血管)

鴨井院長による動画解説

受診までの経過

高校生のときから歯ぎしりをしている自覚がありました。食いしばりがひどく、夜間寝られないほどでした。マウスピースは作ったものの、それに穴が開くほど噛んでしまう状態でした。顎関節は少し触るだけでも痛みがありました。一方、話したり笑ったりするのは大丈夫でした。一連の症状と並行して、首肩のこりもひどくなってきました。ボトックス注射をすすめられましたが、効果が一時的であることから当院の受診を検討されました。

診察時の所見

典型的な顎関節症、さらに食いしばりを伴っている状態でした。長期間の経過から、かなり過敏にもなっていました。首や肩関節の可動域は保たれており、こりについては、肩甲骨周囲は中等度であり首こりが主体でした。エコー検査では、同部位筋肉の線維化所見などを認めたほか、頸椎椎間関節周囲にモヤモヤ血管を反映した異常血流信号も認められました。顎関節症は微細動脈塞栓術(運動器カテーテル治療)が有効な疾患の一つであり、首こりと併せて治療を受けていただきました。

治療の所見

頸部の治療において深頸動脈造影を行うと、左側優位に両側でモヤモヤ血管(病的新生血管)が濃染像として描出されました。次いで、顎関節および食いしばりの治療、また痛みが高じて耳鳴りのような症状も伴っていたため同部位も含めて治療を行いました。顔面動脈、顎動脈分枝などでそれぞれ再現痛も確認できました。それぞれ、治療後、モヤモヤ血管は画像上速やかに消失しました。
*再現痛とは、薬液投与時に普段の痛みが一定程度再現される現象です。責任血管の同定のための参考とします。

治療後の経過

治療後2週間、起床時の顎の痛みが楽になってきました。肩が楽になり、耳鳴りもおさまってきました。特に耳が良く聞こえるようになったそうで、耳の症状が、こりに由来するものだったとわかり大変驚いたと言われました。治療後1ヶ月半、NRS(Numerical Rating Scale)という痛みのスコアではすべての部位で0(痛みなし)にチェックされるほど楽になりました。肩が軽くなり温かい感じがしました。それでも、癖になっているためか、まだ食いしばりは強く、起床時にこわばりは感じていました。そこで漢方薬を処方したところ、食いしばりが軽減されました。水泳や軽めの筋力トレーニングなども取り入れていただきながら良い状態を維持できるように引き続きサポートしています。顎関節症はカテーテル治療が非常に有効な疾患の一つですが、その原因については対処が必要です。まずはしっかりと痛みを鎮めて、マウスピースの装用や、就寝環境の調整、日常生活の改善や運動習慣の導入などで完治を目指します(カテーテル治療後はこうした修正も効果が出やすくなります)。尚、ボトックス注射も上手に活用してもらえればよいと思いますが、過剰接種にはご注意ください。

顎関節症の詳しい病状説明はこちら

 
 

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