足:アキレス腱炎、足底筋膜炎、踵骨棘など

【30代:男性】長距離陸上競技選手に5年以上繰り返し生じていた両側の脛の痛み(シンスプリント)

鴨井院長による動画解説

受診までの経過

マラソンを含めた長距離陸上競技に出場していて、月に500km前後走っていました。5年前から両側の脛の内側に痛みが断続的に出ており、2ヶ月程度休めば楽になるが、再開すると痛くなるというのを繰り返していました。4ヶ月前から再び右脛の痛みが出てきて、さらに左脛にも生じるようになりました。体外衝撃波治療で楽にはなるので、シンスプリントとの診断の下、治療を受けながら練習量を落として走っていました。走ると強い痛みが生じますが、歩行でも痛みが出ている状態でした。これまでの繰り返しを打破できないかと思い、当院を受診しました。受診時には左側の方が痛みは強い状態でした。尚、以前にはMRIで疲労骨折を指摘されたこともありました。

診察時の所見

圧痛は乏しかったのですが、部位や性質からはシンスプリントとして矛盾しませんでした。レントゲンでは明らかな骨折所見は認められない一方で、右側優位に骨膜肥厚を認めました。両側とも典型的は扁平足であり、シンスプリントの一因とも考えられました。痛みの重症度は高くないものの、反復しており、微細動脈塞栓術(運動器カテーテル治療)を行うこととしました。

治療の所見

シンスプリントは骨膜の炎症であり、骨膜に分布する血管を検索する必要があります。一般的な血管解剖では名前も付いていないような動脈を同定していくことになります。右側の脛の骨(脛骨)に分布する骨膜枝の血管造影を行うと、モヤモヤ血管を伴い血流が滞っている様子が観察されました。他部位や他の疾患と比べて、所見は目立たないのですが、明瞭な異常所見です。治療後は画像上速やかに消失しました。左側も同様です。シンスプリントでは治療時に特有の再現痛が認められるためそれも確認したうえで終了としました。

治療前画像:損傷を受ける、あるいは繰り返しのストレスにより発生した異常な新生血管
治療後画像:カテーテルを用いて塞栓物質を血管内に投与し新生血管を塞いだ状態
治療費用:税込324,500円
主なリスク・副作用等:針を刺した場所が出血により腫れや痛みを生じたり、感染したりすることがあります(穿刺部合併症)。造影剤によるアレルギー(皮膚のかゆみ・赤み・息苦しくなるなどの症状)が出ることがあります。

治療後の経過

日常の痛みは数日で無くなりました。治療後10日ほど経ってから走ってみたところ、痛みなく走れましたが、翌日に右側のみ痛くなりました。元々は左側の方が痛かったのですが、左側の方がより回復しているようでした。治療後1ヶ月、やはり左は大丈夫でしたが、右側は走っている時はよいものの、その後に痛みが生じていました。その後は連絡をとることができず追跡できていません。痛みの強かった左側は非常に早期から改善し、その後も順調に経過していたものの、右側は1ヶ月時点ではまだ一定の症状が残っていました。カテーテル治療の効果は本来1ヶ月を過ぎたくらいから本格的に実感できることが多いため、さらに改善していることを期待します。右側は骨膜肥厚像を認めるなど、器質的な変化の程度が大きく、痛みは少なかったものの、組織損傷と言う観点からはより重症度が高かった可能性があります。治療後、日常生活のみで再発する方はまずおられませんが、競技レベルでのスポーツ継続が希望ですので、無理を重ねると再び日常生活にまで支障をきたす可能性があります。そのことも十分ご承知の上ですが、やりたいことを続けられる内は続けていくということもご本人にとっては大切なことであり理解できます。当院としても、引き続き応援したいと思います。

シンスプリントの詳しい病状説明はこちら

 
 

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