鴨井院長による動画解説
受診までの経過
腰椎固定術後の遺残症状についての相談でした。3年前に腰椎すべり症に対して固定術を受けることにより、傾いて歩かなければならなかった状態と、坐骨神経痛による一部の激痛は改善しましたが、夜間の寝返りの際や、起床時の起き上がる動作で左臀部~左大腿に強い痛みを生じていました。何とか普通に歩けるようになりたいと願い、当院を受診されました。
診察時の所見
腰の可動域を確認すると、前屈以外は全てにおいて高度の制限を認めました。股関節内外旋は可能でしたが、内旋時に鼠径部に詰まり感が誘発されました。レントゲンでは仙腸関節の開大、骨硬化像を認めました。股関節は保たれていました。症状の性状、身体診察その他と併せて、仙腸関節障害、腰椎固定術後遺症(合併症ではない)、左坐骨神経痛と判断しました。腰椎固定術後の諸症状はカテーテル治療による改善が困難な場合がありますが、合併症ではなく、高度の神経障害でもないことから、一定の症状改善が得られると判断し、モヤモヤ血管(病的新生血管)に対する運動器カテーテル治療(微細動脈塞栓術)を受けていただきました。
治療の所見
主要責任血管である腰動脈および腸腰動脈のほか、複数個所の治療を行いました。
治療前画像:損傷を受ける、あるいは繰り返しのストレスにより発生した異常な新生血管
治療後画像:カテーテルを用いて塞栓物質を血管内に投与し新生血管を塞いだ状態
治療費用:治療する部位によって費用が異なりますのでこちらをご参照ください。
主なリスク・副作用等:針を刺した場所が出血により腫れや痛みを生じたり、感染したりすることがあります(穿刺部合併症)。造影剤によるアレルギー(皮膚のかゆみ・赤み・息苦しくなるなどの症状)が出ることがあります。
治療後の経過
治療後2週間、以前だと痛くて仰向けになることや、左側を下にして寝ることなどができなかったのが、不思議とできるようになりました。痛い時は収縮期血圧が150台まで上がっていましたが、上がっても130台までくらいにとどまるようになりました。実はカテーテル治療後に血圧が下がることは時々経験します。持続していた痛みストレスが軽減されること、血流が改善することなどが要因と考えられます。左臀部~大腿症状はまだ変わりありませんでした。治療後1ヶ月半、以前よりも動けるようになったものの、動くとその後しんどくなったりもしました。また、症状には波がありました。治療後2ヶ月を過ぎると、急激に改善しました。電話口でも、第一声に『ずいぶんと良くなりました』と力のある明るい声で言われるほどでした。特にご不安が強い方でしたので、大変お元気になられていて驚くほどでした。ほとんど痛みを感じない日も出てきて、臀部や大腿付け根の痛みは元の8割方の症状が改善しました。家事をするのも随分と楽になりました。治療後3ヶ月、たまに痛くなることはあるものの9割方の症状は改善し、起床時に臀部~大腿につっぱりを感じることがある程度になりました。
腰椎固定術後の場合、カテーテル治療を以てしても思うように痛みが取れないことがありますが、本症例では非常に有効でした。合併症ではないこと、恒久的な神経障害をきたしていないことが重要です。また、よく言われることですが、固定術後はたとえ上手くいったとしてもその上下が必ず弱くなり、新たな障害を生じてしまう懸念があります。これまではできることが限られていましたが、そうした場合でもカテーテル治療により症状の大幅な緩和をはかることが可能です。完全にゼロにするのは難しいですが、半分以下にすることは現実的に可能ですので、できることがないと言われてもお気軽に御相談いただければと思います。外科手術により異物が入った後であっても、安全に治療することができるのはカテーテル治療の強みです。


