肘:テニス肘・ゴルフ肘など

【70代:女性】繰り返すステロイド注射により難治状態に陥ったテニス肘に対するモヤモヤ血管治療;カテーテル治療+動脈注射治療(テニス肘、上腕骨外側上顆炎)

鴨井院長による動画解説

受診までの経過

1年9ヶ月前から右肘が痛むようになりました。整形外科ではテニス肘と診断され、ステロイド注射を4回受けました。回を重ねるごとに効き目が悪くなり、手術を提案されましたが、セカンドオピニオンで2つ目の整形外科を受診したところ、手術の必要性は感じないと言われ、さらに追加でステロイド注射を3回受けました。しかしながら改善しませんでした。痛みは常にあり、荷物を持つときや、タオルを絞る時、衣服の着脱時などで増していました。冷蔵庫を開けるのも痛いほどでした。何とか料理ができるようになりたいと願い、
当院の治療を受診されました。

診察時の所見

典型的な上腕骨外側上顆炎でしたが、ステロイド注射が同部に繰り返し行われてきた場合、組織変性や腱断裂が起こっているか、その程度も含めて確認する必要があります。エコー検査をすると、モヤモヤ血管を反映した異常血流信号が豊富に認められました。繰り返しの負担による骨棘形成のほか、ステロイド注射の影響とも考えられる腱変性(低エコー領域)を中等度以上認めました。しかしながら、まだ健常部位も一定程度残存しており、重症、難治ではあるもののどうしようもない状態ではありませんでした。治療適応と判断し、モヤモヤ血管(病的新生血管)に対する運動器カテーテル治療(微細動脈塞栓術)を受けていただきました。

治療の所見

血管造影を行うと、橈側側副動脈、反回骨間動脈でモヤモヤ血管が濃染像として描出されました。治療後は画像上速やかに消失しました。その他複数箇所の治療を行い終了しました。

治療前画像:損傷を受ける、あるいは繰り返しのストレスにより発生した異常な新生血管
治療後画像:カテーテルを用いて塞栓物質を血管内に投与し新生血管を塞いだ状態
治療費用:治療する部位によって費用が異なりますのでこちらをご参照ください。
主なリスク・副作用等:針を刺した場所が出血により腫れや痛みを生じたり、感染したりすることがあります(穿刺部合併症)。造影剤によるアレルギー(皮膚のかゆみ・赤み・息苦しくなるなどの症状)が出ることがあります。

治療後の経過

治療後2週間、まだ症状に変化はありませんでしたが、エコー検査では異常血流信号がほぼ消失していました。治療後1ヶ月、痛みと言うよりも強い違和感に変わってきました。腱の腫れがひいてきました。動脈注射を追加しました。治療後2ヶ月半、改善が進み、肘をまっすぐに伸ばすことができるようになりました。負荷テストでは陽性でしたが、負荷に抵抗して手首を背屈する力が強くなりました。積極的治療を希望され、さらに動脈注射を追加しました。治療後3ヶ月半、また少し痛みが緩和されました。改善には向かっているものの時間がかかっており不安も見られました。エコー検査でも再燃なく、治癒が進んでいる様子でした。治療後4ヶ月半、まだ痛みは残っていましたが、当初のことを思えば良くなっており、今までできなかったことができるようになっている、本当に助かっていると言われました。腱の性状は確実に回復してきています。

本来、カテーテル治療は非常に強力であり、2週間~1ヶ月程度で痛みが完全に消失することも少なくありません。軽症であれば動脈注射による改善も可能です。ところが、本症例のように繰り返しステロイド注射を受けた後だと要注意です。修復と損傷を繰り返すことや、ステロイドそのものの副作用を通して腱変性が進むとあらゆる治療が効きにくくなってしまいます。この時点で外科手術をしたからと言って解決できるとも限りません。初回治療をカテーテル治療で十分に的確に行った後、ステロイドを一切使用せず、動脈注射を補助的に用いることで、3ヶ月以上かけて何とか満足できる状態まで回復させることができました。再発リスクもだいぶ低下してきましたが、安心できるためにはもう3ヶ月程度必要だと考えています。引き続き慎重にフォローアップしているところです。

腱や靭帯は消耗品であり、残ったものを大切にするという考え方が重要です。繰り返しのステロイド注射は高リスクです。複数の医療機関を受診する場合は十分に情報共有がなされていない場合もありますので、特にご注意いただきたいと思います。

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