肘:テニス肘・ゴルフ肘など

【40代:女性】4年に亘るステロイド注射で治らなかったテニス肘~運動器カテーテル治療+動脈注射療法~(テニス肘、ソフトボール、草取り、運動器カテーテル治療、動脈注射療法)

鴨井院長による動画解説

受診までの経過

4年前からソフトボールと畑仕事の草抜きなどが原因で右肘を痛めていました。整形外科でステロイド注射を2ヶ月に1回、4年に亘り繰り返してきましたが良くならないため、外科手術をすすめられ病院を受診しましたが、その際は手術の適応ではないと言われ様子を見てきました。当院ことを知り受診されました。

診察時の所見

肘の外側疼痛部位(上腕骨外側上顆)ではステロイド注射の影響と思われる皮膚萎縮を認めました。負荷テストでは痛みのため全く力を入れられないほどであり、エコー検査では腱変性を中等度以上認め、モヤモヤ血管(病的新生血管)を反映した異常血流信号を多数認めました。典型的かつ重症の上腕骨外側上顆炎、いわゆるテニス肘です。繰り返すステロイド注射の影響で腱が傷んでおり、再発リスクが比較的高い状態でした。特に草取りなどは負担が大きいため、症状がしっかり改善するまでは負担を減らしていただくよう重々ご説明しご理解いただきました。微細動脈塞栓術(運動器カテーテル治療)の適応であり、治療を受けていただきました。

治療の所見

血管造影を行うと、橈側半回動脈および骨間動脈にてモヤモヤ血管が濃染像として描出されました。治療後は画像上、速やかに消失しました。

治療後の経過

治療後1ヶ月、押さえると痛かった症状は完全に消失しました。雑巾も絞れるようになりました。ボウリングの球を持つことはできませんでした。エコーでは明らかに改善がみられるものの、異常血流信号は残存しており動脈注射治療を追加しました。治療後2ヶ月、だいぶ楽になり、軽くボールを投げても大丈夫でした。エコーでは異常血流信号が一部に散見されていたため、より積極的治療を希望され、動脈注射治療を再度追加しました。治療後3ヶ月、大幅に改善し、キャッチボールができるようになりました。バッティングもできました。
負荷テスト陰性、エコーでの異常血流信号も消失しました。難治の経過であったにもかかわらず、一定の運動を続けながらの治療を目指しているため、カテーテル治療後にも補助治療として追加動脈注射療法を行いましたが、ステロイドを一切使用することなく症状はほぼ消失しました。引き続き慎重にフォローアップしているところです。

繰り返すステロイド注射や、繰り返す損傷と修復により腱変性が進むと、いわゆる難治の状態となります。こうなると、いよいよステロイド注射の使用は避けて何とかしなければなりません。モヤモヤ血管治療(微細動脈塞栓術)は腱を温存して炎症を強力に鎮めることのできる治療です。本症例では、初回治療を確実なカテーテル治療にて行った後に、動脈注射療法にて補助治療を追加で行うことで治療を完結させました。腱の状態が悪い場合に考慮されます。(動脈注射療法の有効性は個人差があり、カテーテル治療後もカテーテル治療を重ねた方が良い場合もあります)

テニス肘の詳しい病状説明はこちら

 
 

関連記事