足:アキレス腱炎、足底筋膜炎、踵骨棘など

【30代:男性】マラソンランナーに生じた大腿裏付け根の痛み、ハムストリングス付着部炎に対するモヤモヤ血管治療(ハムストリングス付着部炎、仙腸関節障害)

鴨井院長による動画解説

受診までの経過

マラソンにも参加するなどランニングを趣味としている方です。週に5-6回、14km/日程度走るのを日課としていましたが、9ヶ月前から右脚付け根の後ろ側、ハムストリングス付着部が痛むようになりました。その後も5ヶ月くらいはだましだましランニングを続けていましたが、症状が悪化してきたため走るのをやめて鍼灸治療に通いました。しかしながら、あまり改善がみられませんでした。その内に、ぎっくり腰を何回か起こし、腰痛も併発するようになりました。できればランニングは続けながら治したいという希望で、当院を受診されました。

診察時の所見

腰の動きを確認すると、前屈で中等度以上の制限があり、腰部や右ハムストリングス付着部に疼痛が誘発されました。後上腸骨棘近傍に圧痛を認めました。右ハムストリングス付着部において圧痛を認めたほか、負荷テストでも陽性でした。股関節は問題ありませんでした。レントゲンでは仙腸関節の骨硬化像や、開大傾向が認められました。ハムストリングス付着部である坐骨の骨表層不整像も認められました。その他の診察所見を含めて総合的に判断し、右ハムストリングス付着部炎および仙腸関節障害と診断しました。治療適応と判断し、モヤモヤ血管(病的新生血管)に対する運動器カテーテル治療(微細動脈塞栓術)を受けていただきました。

治療の所見

ハムストリングス付着部に重要な下殿動脈の分枝を治療した後、腰痛に対する腸腰動脈等を治療しました。ハムストリングス付着部炎においては、股関節周囲の血管も重要です。閉鎖動脈や内側大腿回旋動脈の血管造影では、モヤモヤ血管が濃染像として描出されました。治療後は画像上速やかに消失しました。それぞれで、再現痛も明瞭に確認されました。その他複数箇所の治療を行い終了しました。
*再現痛とは、薬液投与時に普段の痛みが一定程度再現される現象です。責任血管の同定のための参考とします。特に腰臀部領域ではモヤモヤ血管が描出されにくいため、再現痛の確認が重要です。

治療後の経過

治療翌日には炎症感がおさまり、2日後に再燃したように感じましたが、そこからどんどんと良くなってきました。治療後2週間、実は起床時の症状が最も悪かったのですが、それがだいぶ気にならなくなりました。痛みが良くなったためか、突っ張り感が気になりました。診察では、後上腸骨棘近傍の圧痛は消失していました。その翌日に、ハムストリングス付着部の違和感が消失しました。治療後3週間くらいで10kmほどランニングをしてみたところ、再び違和感が生じ、しばらく続きましたが、1週間くらいで気にならなくなりました。治療後1ヶ月半、前述内容の申告からランニング再開には時期尚早と判断し、1ヶ月ほど控えていただくこととしました。治療後2ヶ月半、日常生活ではほとんど痛みを感じることが無くなりました。徐々に運動を再開することとしました。走った後に炎症を感じたものの、元の状態からすると8-9割方改善しているということでした。治療後3ヶ月、16km/日のランニングを行うことができ、翌日に引きずるような症状もありませんでした。順調に改善していました。腰痛の訴えも無くなっていました。引き続き、慎重にフォローアップしていく予定です。

ハムストリングス付着部炎はモヤモヤ血管治療の適応疾患の一つであり、痛みは良く治まりますが、実際には同部位の組織損傷があるため、運動再開のリスクは個人差がかなり大きいです。重症になるほど、運動の再開は慎重にならなければなりません。特に、日常生活でも痛みが生じる内は負荷の大きなランニングは控える必要があります。痛みをこらえて、だましだまし走り続けると状況が悪化してしまいます。安静にするべき時は安静を守っていただき、しっかり治してからまた楽しんでいただきたいと思います。

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