膝:変形性膝関節症など

【60代:男性】膝に水が溜まり、MRIで骨挫傷も指摘・・さらに膝蓋下脂肪体炎も合併した重症変形性膝関節症(骨挫傷、骨壊死、膝蓋下脂肪体炎、変形性膝関節症)

鴨井院長による動画解説

受診までの経過

55年以上卓球をしており、今も現役で大会に出場していますが、4ヶ月前の試合後翌日から左膝に痛みが生じるようになりました。特に、左膝のお皿の下のくぼみあたりが歩行時や階段昇降時に痛みました。MRI検査では、変形性膝関節症、半月板損傷、骨挫傷などを指摘されました。水が溜まっていたため、水を抜きヒアルロン酸注射を受けました。さらに翌月、APS治療を受け2週間くらいは症状が幾分緩和されたように感じたものの中々改善せず他の治療方法を探していました。何とかもう10年卓球をがんばりたいという意欲もあり、脂肪幹細胞による再生医療も受ける予定でいましたが、その前に当院の受診を希望し来院されました。

診察時の所見

エコー検査では強い炎症を反映して膝蓋上嚢に水が溜まっていました。前医のレントゲンでは中等度以上の関節変形の進行を認め、MRI-STIR像では確かに炎症/損傷が骨(大腿骨内顆)にまで及んでいることが明らかでした。変形性膝関節症の病態は多岐に及びますが、こうした骨病変を伴っている場合はそうでない場合と比べると治りにくく再発しやすい傾向があります。カテーテル治療を行ったとしても、同様ですので、今よりも大幅に症状を改善させることが可能である一方で、再発予防のための負荷軽減や筋力維持・強化が重要であることを十分ご理解いただいたうえで微細動脈塞栓術(運動器カテーテル治療)を受けていただきました。

治療の所見

血管造影を行うと、下行膝動脈、内側下膝動脈などの内側に関係する血管において特にモヤモヤ血管(病的新生血管)が描出されました。MRI検査の結果ともよく合致していました。一方、(4ヶ月前の)MRIでは明らかではありませんでしたが、外側下膝動脈造影を行うと、膝蓋下脂肪体においてモヤモヤ血管が鮮明に描出されました。膝のお皿の下のくぼみが特に痛いということでしたが、まさに膝蓋下脂肪体炎の典型的な所見に合致していました。治療後は画像上速やかに消失しました。

治療前画像:損傷を受ける、あるいは繰り返しのストレスにより発生した異常な新生血管
治療後画像:カテーテルを用いて塞栓物質を血管内に投与し新生血管を塞いだ状態
治療費用:税込324,500円
主なリスク・副作用等:針を刺した場所が出血により腫れや痛みを生じたり、感染したりすることがあります(穿刺部合併症)。造影剤によるアレルギー(皮膚のかゆみ・赤み・息苦しくなるなどの症状)が出ることがあります。

治療後の経過

治療後2週間くらいから改善してきて、3週間時点で体重をかけた時の痛みは9割方良くなりました。エコー検査では、異常血流信号は大幅に減少しており、膝に溜まっていた水も消失していました。治療後1ヶ月の時点で再生医療(幹細胞治療)も受けました。こうした新規の異なる治療法の組み合わせの効果についてはまだ明らかではありませんが、モヤモヤ血管の治療によりしっかりと炎症を鎮めた後に再生医療を追加していただくことは相乗効果が期待できるのではないかと考えられます。ご自身の判断で卓球も再開されましたが、問題なくプレーできました。まだ長く歩行すると膝蓋下脂肪体の部位が痛むものの数分休めば回復するようになりました。治療後3ヶ月、まだ遠くのボールに対処しようとするときなどに走る痛みがあるものの、元の痛みの8割程度は改善しました(2/10程度)。膝関節における圧痛は消失しました。その後も順調に経過していましたが、捻る動作をしたときにまだ痛みが出ること、残りの症状をもう少し改善したいという希望からさらなる改善を目指して追加治療を受けました(2回目のカテーテル治療)。脂肪組織は炎症が生じやすい組織であり、ひとたび生じるとしつこいことが多いため、追加治療の意義も大きいと判断しました。治療後は9割程度改善し(1/10程度)卓球も引き続きプレーしています。現在経過観察中です。変形性膝関節症の中でも、骨病変や膝蓋下脂肪体の強い炎症を伴うなど重症度の高い状態でしたが、大幅に改善させることができました。変形性膝関節症は進行性の疾患ですが、少しでも長く卓球を続けていただけるよう今後もサポートしていきます。

変形性膝関節症の詳しい病状説明はこちら

 
 

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