鴨井院長による動画解説
受診までの経過
きっかけはストレスおよびステロイド軟膏の塗布でした。4年前に、レーザー治療後の発赤部に対してステロイド軟膏を1ヶ月以上に亘り使用していたところ、頬がすごく赤くなってしまいました。血液検査では特に異常はなく、更年期障害を疑われてホルモン補充療法も受けましたが、効果はありませんでした。寒い時はまだよいのですが、暖房が効いた部屋に行くと顔が真っ赤になってしまいます。保冷剤を顔に当てるなどして対応していました。当院の治療を知り受診されました。
診察時の所見
顔面酒さ、ステロイド性皮膚炎が疑われました。治療適応と判断し、モヤモヤ血管(病的新生血管)に対する運動器カテーテル治療(微細動脈塞栓術)を受けていただきました。
治療の所見
血管造影を行うと、顎動脈、顔面動脈でモヤモヤ血管が濃染像として描出されました。いずれも、頬に一部が灌流する血管です。治療中は、同部に一致して、再現痛および、色調変化が見られました。薬液を投与すると、一時的に皮膚の色調が白くなりその後赤みが戻り、元の色調に回復するという変化が起きます。これらを確認することで、治療標的部位に十分な治療ができたかどうかを確かめます。治療後モヤモヤ血管は画像上速やかに消失しました。その他複数箇所の治療を行い終了しました。
*再現痛とは、薬液投与時に普段の痛みや灼熱感が一定程度再現される現象です。責任血管の同定のための参考とします。
治療前画像:損傷を受ける、あるいは繰り返しのストレスにより発生した異常な新生血管
治療後画像:カテーテルを用いて塞栓物質を血管内に投与し新生血管を塞いだ状態
治療費用:治療する部位によって費用が異なりますのでこちらをご参照ください。
主なリスク・副作用等:針を刺した場所が出血により腫れや痛みを生じたり、感染したりすることがあります(穿刺部合併症)。造影剤によるアレルギー(皮膚のかゆみ・赤み・息苦しくなるなどの症状)が出ることがあります。
治療後の経過
治療後1ヶ月時点では、まだ目立った変化はありませんでした。その後の2週間で大きく変化し、治療後1ヶ月半では、頬の赤みが明らかに減っていました。診察室での視診上は、全く酒さは見られないほどでしたが、まだ波があるようでした。治療後2ヶ月半、真っ赤になることは無くなりました。多少赤くなることはあるものの、その頻度が減り、保冷剤を当てることも無くなりました。治療後しばらくは、中々変化が無く不安が募るばかりでしたが、ここにきてようやく、『本当に良くなり、治療を受けてよかった』と言っていただけるようになりました。その後も順調に経過し、治療後4ヶ月時点でも再発は見られず、冷たいタオルを当てることも無くなりました。今後、季節が移り変わる中で再発してこないか様子を見ているところです。酒さは、本当に辛い症状の一つであり、身体的症状以上にメンタルの不調を伴っている事例が少なくありません。中々他人には理解してもらいにくく、本人が辛さを一人で抱えざるを得ないこともあります。モヤモヤ血管に対するカテーテル治療という新しい治療方法で、少しでも多くの方々のお役に立てればと思います。


