鴨井院長による動画解説
受診までの経過
10年前から毎日頭痛がありましたが、5年前からは左頸部が特に痛むようになり、頭痛とこりもひどくなりました。じっくり考えるということができなくなり、考えがまとまらなくなるほどでした。顎関節もかくかくというようになりました。複数の医療機関を受診しましたが、頸椎症はあるものの、頭痛とは関係がなく、首肩こりからくる筋緊張性頭痛と診断されました。片頭痛の薬は効きませんでしたが、バファリン内服で幾分和らぎました。トリガーポイント注射やリハビリは効果がなく、心療内科に通院するようになりました。常にジーンとした感じがあるものの、入浴したときだけは、こりや頭痛が軽減しました。毎日の頭痛がとてもつらく、当院を受診されました。
診察時の所見
首の可動域は全方向で高度に制限されていました。触診すると、こりの程度は非常に高度であり、圧痛が明瞭に認められました。エコー検査では、僧帽筋および周囲組織の線維化所見を中等度以上認めたほか、頸椎椎間関節周囲においてモヤモヤ血管を反映した異常血流信号を認めました。重症の首肩こりに起因する筋緊張性頭痛として矛盾しませんでした。それだけでなく、顔こり、顎関節症も合併していました。治療適応と判断し、モヤモヤ血管(病的新生血管)に対する運動器カテーテル治療(微細動脈塞栓術)を受けていただきました。尚、本症例の場合は重症度が高い状態でしたので、複数回の治療が必要になる可能性についても事前にご説明しました。
治療の所見
まず首肩こりの治療を行いました。血管造影を行うと、首こりの主要責任血管である深頸動脈、上行頸動脈筋肉枝などでモヤモヤ血管が濃染像として描出されました。肩こりの主要責任血管である頸横動脈、その他複数個所の血管を治療した後、頭部・顔面の治療を行いました。特に、後頭動脈でモヤモヤ血管が濃染像として描出されました。いずれも治療後は画像上速やかに消失しました。その他複数箇所の治療を行い終了しました。
治療後の経過
治療当日は、波打つような拍動性の頭痛がありました。翌日目が覚めると、肩に覆いかぶさっていたような症状が無くなっていました。治療後1ヶ月、頭痛と右頸部の痛みはかなり改善し、朝からぎゅーっと締め付けられるような頭痛はなくなりました。左頸部の痛みに伴い頭痛が感じられる程度に変わりました。何よりも一番変わったのは、家族からの印象です。以前は、仕事から帰宅すると家事もできずに横たわっていたのが、帰った後もいろいろと動けるようになったため、家族が一番驚いているとのことでした。一方、だいぶ動くようにはなったものの、まだ左方向を向くときの左頸部の痛みが残っていました。治療後2ヶ月、左頸部の痛みは横ばいで経過していました。その他の痛みはさらに改善していました。左頸部のみ注射加療を行い様子を見たところ、その後痛みが大幅に解消されました。治療後3ヶ月時点では、引っかかりのような違和感が時折あるものの、可動域も首の左回旋が30度くらいだったのが、60度くらいまで改善しました。めまい、ふわふわ感は完全に消失しました。頭痛もほとんど無くなり、薬を飲むことも少なくなりました。その後、心療内科の薬を含めて全ての薬を中止してみましたが、増悪なく経過していました。以前は億劫だった車の運転もストレスなくできるようになりました。やはりデスクワークを継続しているため疲労は蓄積するものの、全体としては、術前を10としたときに、2くらいになっているとのことでした。非常に明るい声でご報告いただいたのが印象的でした。本症例のように、首肩こり・頭痛もひどくなると、『考えがまとまらない』、『集中できない』など大きく日常生活に支障をきたすこととなります。複数回の治療を要する場合もありますが、幸い、単回の治療で満足できる状態に改善させることができました。残存症状については、日常生活の改善や運動習慣を取り入れていただくことなどで解消していくことができます。


