腰:椎間関節炎など

【60代:男性】切らずに治すヘルニア治療!1ヶ月前から増悪した10年来の腰痛に対するモヤモヤ血管治療(腰椎椎間板ヘルニア、筋・筋膜性疼痛症候群)

鴨井院長による動画解説

受診までの経過

10年前から腰痛を抱えていました。ぎっくり腰も度々繰り返してきました。デスクワークによる長時間の座位、運動不足が原因で、1ヶ月前から増悪してきました。元々は右腰痛でしたが、左のほうが痛く、左臀部から大腿の裏にかけて痛み・痺れがありました。背筋を伸ばして座っているときは良いものの、姿勢が崩れると痛みが増悪しました。立位や歩行ではそれほど痛みはなく、入浴で体が温まると楽になりました。症状は四六時中あり、夜間寝るときでもふくらはぎまで痛くて寝られないこともありました。バファリンが良く効くため、都度服用していました。

診察時の所見

腰の動きを確認すると、前屈では極めて高度に、後屈や側屈で高度、回旋で中等度以上の可動域制限を認めました。股関節内外旋は可能でしたが、右内旋で左臀部~大腿背側の痛みが誘発されました。MRI検査では腰椎が直線化していたほか、L5/S椎間板ヘルニア(第5腰椎と仙骨の間)による左第一仙骨神経の圧迫所見を認めました。L4/5, L5/Sの棘間靭帯炎や、椎間孔狭窄などもそれぞれ軽度に認められました。画像では腰椎椎間板ヘルニアが主要因と思われましたが、硬さを根底とした筋・筋膜性疼痛症候群、さらに仙腸関節障害なども合併しているものと考えられました。強い神経症状が生じてからまだ1ヶ月程度であり、ヘルニアについては直ちに外科手術の適応となるわけではありません。カテーテル治療による改善が十分期待されたため、モヤモヤ血管(病的新生血管)に対する運動器カテーテル治療(微細動脈塞栓術)を受けていただきました。

治療の所見

左L4/5,5/S周囲に分布する血管のほか、仙腸関節や、腸腰筋などの筋肉の付着部などに関係する血管について治療を行いました。左腰動脈、腸腰動脈、正中仙骨動脈、外側仙骨動脈などでそれぞれ再現痛を認めました。
*再現痛とは、薬液投与時に普段の痛みが一定程度再現される現象です。責任血管の同定のための参考とします。特に腰臀部領域では、モヤモヤ血管を視認することが困難なことが多いため再現痛の確認は重要です。

治療後の経過

治療後2週間、まだ痛みはあるものの、痛みの性質が変わってきました。起きたときに攣ったような痛さはあるものの、以前のように寝られないということはなくなりました。日常生活でも大きな支障はきたさなくなりました。治療後3週間くらいからはっきりと改善してきて、治療後1ヶ月半の受診時には腰の痛みは消失していました。圧痛もほぼ消失しました。左下腿が重いかなという程度であり、痛みがない日もありました。全体的には8割方改善した感覚でした(術前を10としたときに2程度;2/10程度)。治療後3ヶ月、たまに前かがみになった際に瞬間的な痛みが出ることはあるものの、ほぼ消失しました。経過良好であり、終診としました。カテーテル治療はヘルニアを直接小さくするようなことはできませんが、それに伴い生じた炎症を鎮めたり血流を改善したりすることなどにより症状を大幅に改善することが可能です。本症例でもそうした観点から改善の余地が大きく見込まれたため治療を受けていただき、実際に改善させることができました。局所的な外科手術と異なり、他の組織や領域にまで広範囲に影響を及ぼすことができるのも良い点です。一方、麻痺症状をきたすなど決定的に強い神経の圧迫を生じている場合は外科手術が必須であり、代替になるわけではありません。

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