その他:帯状疱疹後など

【60代:男性】4年経っても治らなかった胸から背中にかけての帯状疱疹後神経痛(帯状疱疹後神経痛)

鴨井院長による動画解説

受診までの経過

4年前、右前胸部~背中にかけての帯状疱疹に罹患しました。その後、神経痛が生じるようになり、特に右肩甲骨~右脇にかけてジリジリ、ズキズキと痛みました。服が擦れたときや、Tシャツを着ているときに脇から風が入ったとき、車の振動で痛み、汗でしみました。痛みは四六時中続き、何かに集中しているときだけは一瞬忘れられました。入浴で体が温まると楽になりました。鬱の合併はなく、途中で起きることはあるものの、睡眠は十分とれていました。食欲は低下してしまい、体重は4年前から4-5kg減りました。出かけることは少ないですが、2000歩~3000歩程度の散歩は時々していました。ペインクリニックでは内服治療を受けていました。薬を2 日ほど止めると痛みが増すため、一定の効果はあるようでした(プレガバリン、ノイロトロピン処方)。一生治らないと説明を受けていましたが、少しでも緩和されればと思い当院を受診されました。

診察時の所見

元々の炎症が高度であったこと、入浴や鎮痛薬で一定程度緩和されること、痛みに対する抵抗力は一定程度維持されていることなどから、治療による症状緩和の期待はありました。罹病期間1年以上であり、無効の可能性があることをご説明しご理解いただいたうえで、病的新生血管(モヤモヤ血管)に対する微細動脈塞栓術(運動器カテーテル治療)を受けていただきました。

治療の所見

胸部、側胸部、背部の治療をそれぞれ行いました。内胸動脈、胸背動脈のほか、下行肩甲動脈や肋間動脈にてそれぞれ再現痛を認めました。
*再現痛とは、薬液投与時に普段の痛みが一定程度再現される現象です。責任血管の同定のための参考とします。

治療後の経過

治療後2週間、まだ大きく変化はありませんでしたが、少し範囲が狭くなってきた気がしました。治療後1ヶ月にさしかかる頃、突然大幅に改善しました。強い痛みはほとんど出なくなり、7割方の痛みは改善しました(治療前の痛みを10としたときに3/10程度)。不安が大幅に減り活動的になりました。以前は面で痛みを感じていましたが、その輪郭の痛みが残っているように感じました。ピリピリとする感じでした。治療後3ヶ月、痛みというのはあまり感じなくなり、感覚的にはしこりがある感じとのことでした。実際にしこりがあるわけではありませんが、固まっているように感じ、その部分も小さくはなってきていました。現在、服薬について減量、中止を進めているところです。4年経過した帯状疱疹後神経痛であり、一般的には厳しい状態です。一生治らないと言われるのも無理はなく、カテーテル治療でも改善困難な場合がありますが、非常に有効でした。初期の炎症が強かった、入浴や鎮痛薬で一時的にでも改善する、鬱状態や高度の睡眠障害を伴っていないなど一定の痛みに対する抵抗力が維持されている点などは治療効果が期待できる要素でした。諦めずに治療を受けていただいて本当に良かったと思います。

帯状疱疹後神経痛の詳しい病状説明はこちら

 
 

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