足:アキレス腱炎、足底筋膜炎、踵骨棘など

【40代:男性】6年間続いたサッカーでの肉離れ後遺症によるしつこい大腿の慢性痛(ハムスリングス炎、肉離れ後遺症)

鴨井院長による動画解説

受診までの経過

週に1-2回、サッカー、フットサルをしている方です。これまで何度か左大腿裏側の肉離れを繰り返していました。そのためか、6年前くらいから慢性的に痛みを生じるようになり、運動はできるものの、プレーし続けていると痛みが増していました。調子よく過ごせるときもあり様子を見ていましたが、いつまでも完治しないこと、1ヶ月半前から悪化してきたためサッカーを1ヶ月間休んでみたものの改善しないことから当院を受診されました。長時間の座位や立位でも痛くなり、起床時に感じることもありました。座位では、大腿裏ができるだけ接触しないように椅子に浅く腰掛けると痛みは出ないとのことでした。
*状態は安定しているものの、うつ病にて心療内科に通院中

診察時の所見

ハムストリングス付着部への負荷テストは陰性でした。坐骨周囲に圧痛はみられず、大腿背側のハムストリングス中間部において圧痛が認められました。エコー検査では肉離れの所見はみられませんでした。筋肉に明らかな異常所見は認められませんでしたが、神経周囲組織の線維化所見を認めました。モヤモヤ血管治療の適応と判断し、微細動脈塞栓術を受けていただきました。

治療の所見

治療では血管の中でも筋肉枝を狙うこととなります。他の治療部位では肩こりや梨状筋症候群の治療と類似しています。よほどの強い炎症でない限りモヤモヤ血管が目立って描出されるということはあまりないため、再現痛を頼りに該当する部位の治療を行っていくこととなります。比較的頻度の高いハムストリングス付着部炎ではなく、実質部(体部, 中間部)の疼痛でしたので、広範囲の治療を行いました。一定の再現痛を確認し、十分な治療ができたことを確認して終了しました。
*再現痛とは、薬液投与時に普段の痛みが一定程度再現される現象です。責任血管の同定のための参考とします

治療後の経過

治療後2日くらいから少しずつ改善されてきて、2週間では左大腿背側の痛みは緩和されていました。一方、内腿高位の痛みは残っており、まだ圧痛も残っていました。治療後1ヶ月半、内腿高位の痛みが改善しましたが、大腿背側の痛みがまだ気になるとのことであり、ハイドロリリース注射を追加しました。その後は順調に経過し、治療後2ヶ月では痛みがゼロではないもののほとんど気にならない状態となりました。フットサルや自転車などもできるようになりました。治療後5ヶ月でも良好に経過されています。筋肉は本来回復力の強い組織であり、慢性痛にはなりにくいのですが、肉離れなどの強い損傷・炎症が繰り返されたり、酷使したりすることなどにより生じることがあります。ハムストリングスでは付着部炎のほうが頻度は高いですが、肉離れがきっかけの場合は本症例のように中間部にも生じます。肉離れが一旦治癒すると画像上は目立った異常はみられなくなりますが、そうした場合でも一定のモヤモヤ血管がとどまっていて悪さをしていることがあります。肉離れ後の痛みや強い違和感がいつまでも取れない場合は治療をご検討いただくとよいと思います。

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