股:変形性股関節症など

【40代:女性】常に陰部が腫れぼったく、下着が擦れるだけでもヒリヒリして座っていられない・・日常生活を完全に破壊されてしまった、新型コロナウイルス(Covid-19)に併発した発症3ヶ月の間質性膀胱炎および誘発性膣前庭炎に対するモヤモヤ血管治療(間質性膀胱炎、誘発性膣前庭炎、新型コロナウイルス(Covid-19))、Long COVID)

鴨井院長による動画解説

受診までの経過

1年半前にも膀胱炎になったことがありましたが、3ヶ月前に新型コロナウイルス(covid-19)に罹患すると同時に、膀胱炎と膣炎を併発しました。その時から陰部が下着に擦れるとヒリヒリし、外陰部の不快感がとれず、座って圧迫された状態になると、外陰部全体がズキズキしてすぐに姿勢を変えたり、立ち上がったりしないといけない状態でした。特に夕方になるとしんどくなりました。一方、寝ている時は特段の痛みはなく、入浴中は痛みを感じないくらいすごく楽でした。頻尿や残尿感はありませんでした。婦人科、泌尿器科に何度もかかりましたが、異常はないと言われました。婦人科ではかぶれだろうと言われて軟膏を出されましたが、塗っても特に変わりませんでした。症状がずっと続くことで、不安が募り、気持ちも滅入ってしまいました。2週間前からは、さらに肛門周囲や大腿の裏までヒリヒリするようになりました。当院の治療を知り受診されました。尚、少しの刺激でもミミズ腫れになってしまうほど皮膚が弱く、そうしたこともこじれている原因かもしれないとのことでした。

診察時の所見

膀胱鏡検査はされていないようでしたが、症状の性状からは間質性膀胱炎および誘発性膣前庭炎が疑われました。これらは合併することがあります。新型コロナウイルスとの因果関係は不明ですが、後述するように免疫異常に伴い併発した可能性があります。発症3ヶ月であり、炎症所見が明瞭であることから、治療適応と判断し、モヤモヤ血管(病的新生血管)に対する運動器カテーテル治療(微細動脈塞栓術)を受けていただきました。

治療の所見

血管造影を行うと、膀胱・膣前庭症状に重要な下膀胱動脈においてモヤモヤ血管が濃染像として描出されました。治療後は画像上速やかに消失しました。肛門の症状に重要な内陰部動脈でも同様にモヤモヤ血管が描出されました。同血管は粘膜に広く分布することから健常でもモヤモヤ血管のように見える部位ですので、異常かどうかの判断は慎重を要しますが、治療後との比較では一目瞭然です。再現痛も明らかでした。脚の付け根、大腿裏の症状にも関与する閉鎖動脈など、その他複数箇所の治療を行い終了しました。
*再現痛とは、薬液投与時に普段の痛みが一定程度再現される現象です。責任血管の同定のための参考とします。

治療前画像:損傷を受ける、あるいは繰り返しのストレスにより発生した異常な新生血管
治療後画像:カテーテルを用いて塞栓物質を血管内に投与し新生血管を塞いだ状態
治療費用:治療する部位によって費用が異なりますのでこちらをご参照ください。
主なリスク・副作用等:針を刺した場所が出血により腫れや痛みを生じたり、感染したりすることがあります(穿刺部合併症)。造影剤によるアレルギー(皮膚のかゆみ・赤み・息苦しくなるなどの症状)が出ることがあります。

治療後の経過

治療後2週間くらいは変わりがありませんでしたが、その後、ズキズキ・ヒリヒリとした強い痛みは減りました。治療後3週間、すごく痛いということは無くなり、肛門周囲のひりつき(辛い物を食べた後にお尻が痛くなるような感じ)はほとんど感じなくなりました。大腿の症状も消失しました。以前は下腹部にも痛みを感じていましたが、それもほとんど無くなりました。陰部については、特に尿道口に違和感があるというのがはっきりとわかるようになりました(症状の限局化)。陰部全体の腫れぼったい感じがまだありました。起床時には少し緩和されているものの、これらの2つが特に気になっていました。治療後1ヶ月半、座位で1-2時間過ごすとヒリヒリと痛みましたが、歩行時の擦れる痛みはほとんど無くなり違和感程度となりました。腫れぼったい感じはまだゼロではありませんでした。日中に忘れられる時間がものすごく増えて、メンタル的にも落ち着きました。全体的には、6-7割程度の症状が改善したということでした(3-4/10程度)。しかしながら、その後は横ばいで、長時間のデスクワークではヒリヒリと痛み、生理の際に締め付けのある下着を使用した際に症状が増すことも続いていました。メンタルの不調から眠れなくなり、心療内科にも通院するようになりました。服薬により眠れるようにはなりましたが、デスクワークが続いたときの不快感をもう少し解消するために追加治療をご希望されました。初回治療後3ヶ月で2回目のカテーテル治療を行いました。血管造影を行うと、モヤモヤ血管は初回に比べると大幅に減少していましたが、さらに追加治療を行いました。治療後2週間では前回同様明確な変化はありませんでしたが、1ヶ月半を過ぎた頃から急速に回復が進み、追加治療後3ヶ月ではほとんどの症状がとれていました(0-1/10程度)。通常の日常生活で痛むことは無くなり、長時間の座位でも時に少しの痛みを感じる程度まで改善しました。まだぶり返さないか不安はあるものの、仕事も含めてほぼ元の日常を取り戻せていました。

間質性膀胱炎、誘発性膣前庭炎とも難治の痛みの一つであり、日常生活やメンタルが大きく障害されてしまうほどの症状を引き起こします。あらゆる治療が効きにくい要注意疾患の一つですが、発症から3ヶ月でしたので、カテーテル治療が良く効きました。複数回の治療を行う意義が大きい疾患であり、2回の治療を経て、ほぼ症状が無くなるところまで快復しました。今後は再発してこないか慎重に経過観察をしていきますが、現時点では幸いそうしたご報告はいただいておりません。難治とされる痛みほど、早めに治療を受けていただくことが重要です。

新型コロナウイルス(Covid-19)との因果関係ですが、直接の影響としては確立していないものの、間質性膀胱炎様の症状や、膣前庭炎症状の併発については複数の報告があります。また、間質性膀胱炎と誘発性膣前庭炎の合併はそもそも稀ではありません。Covid-19はサイトカインストームを含む免疫異常を引き起こすことが広く知られていますが、そうした免疫異常や自己免疫反応が膀胱に波及したり、膀胱上皮そのものに直接ウイルスが侵入したりする可能性なども指摘されています。また、神経過敏(中枢感作)を引き起こして症状を悪化させることがLong COVID(Covid-19後遺症)のメカニズムの一つでもありますが、これにより膀胱炎症状や膣前庭炎症状が悪化することも考えられますし、ホルモンバランスの乱れを引き起こし、間接的に作用することも考えられます(膣前庭はホルモン感受性が高い部位です)。以上のように、まだ確立しているわけではありませんが、本症例においてもCovid-19と無関係ではないと思われます。Long COVIDに対するモヤモヤ血管治療の事例はこれまでもいくつかご紹介してきました。有効な治療選択肢の一つだと思います。

間質性膀胱炎の詳細はこちら

 
 

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