股:変形性股関節症など

【50代:男性】レントゲンでは問題ないと言われたが、一歩歩くたびに足の付け根が痛む。~早期変形性股関節症に対するモヤモヤ血管治療~(変形性股関節症)

鴨井院長による動画解説

受診までの経過

1年前から右股関節を痛めるようになりました。それまでは全く何ともなかったのですが、一歩一歩歩くたびに股関節に一定の痛みが生じるようになりました。歩く距離が長くなると、ふくらはぎや内股、つま先に痺れを感じることもありました。腰痛はありませんでしたが、臀部痛がありました。複数箇所で診療を受けましたが、レントゲンでは異常が無いと言われ特段の対処方法もなかった中で、当院の治療を知り受診されました。

診察時の所見

右股関節の動作を確認すると、内旋、外旋とも制限があり疼痛も誘発されました。上後腸骨棘(PSIS)や梨状筋深部でも圧痛を認めましたが、股関節由来の炎症が主体であることは明らかでした。レントゲンでは、右股関節の変形は高度ではなく、これくらいであれば異常はないと言われるのも理解できましたが、それでも全く健常の状態ではなく、臼蓋の骨性変化などを伴っており中等度以下の変形性関節症をきたしていました。変形性関節症は、必ずしも変形が進んだ方が炎症や痛みが強いわけではなく、比較的早期でも強い炎症が起こることが知られています。また、下肢症状については変形性股関節症単独の影響ではなく、他の坐骨神経障害の要因によるものと思われました。その他の身体診察所見と併せて検討した結果、右変形性股関節症を主体として、仙腸関節障害、右坐骨神経障害を合併した状態と判断いたしました。治療による症状の改善が見込まれたため、モヤモヤ血管(病的新生血管)に対する運動器カテーテル治療(微細動脈塞栓術)を受けていただきました。

治療の所見

血管造影を行うと、上殿動脈の股関節枝、外側大腿回旋動脈、閉鎖動脈にてモヤモヤ血管が濃染像として明瞭に描出されました。変形性股関節症はモヤモヤ血管がはっきりと視認できることが多い疾患の一つです。治療後は画像上速やかに消失しました。その他複数箇所の治療を行い終了しました。

治療前画像:損傷を受ける、あるいは繰り返しのストレスにより発生した異常な新生血管
治療後画像:カテーテルを用いて塞栓物質を血管内に投与し新生血管を塞いだ状態
治療費用:税込324,500円
主なリスク・副作用等:針を刺した場所が出血により腫れや痛みを生じたり、感染したりすることがあります(穿刺部合併症)。造影剤によるアレルギー(皮膚のかゆみ・赤み・息苦しくなるなどの症状)が出ることがあります。

治療後の経過

治療後1週間くらいから改善してきました。治療後2週間時点では、痛みの出る範囲がかなり狭くなり、痺れも無くなりました。動作が軽くなり、びっこをひくことなく歩けるようになりました。しばらくの間は、力の入りにくさを感じることがあったり、歩幅を拡げて早く歩いた時などに少しズキッとしたりすることがありましたが、治療後2ヶ月を過ぎると、そうしたことも無くなりました。治療後6ヶ月時点でも再発なく順調に過ごしておられ、『もっと早く来れば良かった』と言われました。変形性股関節症の進展には、過重負担および足元からの負担が大きく影響します。左右の脚長差も生じてきますので、再発予防・進行予防のためには、適切な靴を履き、インソールを調整することが重要です。良い状態を維持できるよう、この方にも取り組んでもらっているところです。

変形性股関節症の詳しい病状説明はこちら

 
 

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