腰:椎間関節炎など

【10代:男性】中学生バスケットボールプレイヤーを悩ませた腰椎分離症の痛みに対するモヤモヤ血管治療(腰椎分離症、スポーツ障害)

鴨井院長による動画解説

受診までの経過

中学生バスケットボールプレイヤーです。以前にも右側に腰椎分離症を起こしていましたが、2ヶ月前に今度は左腰を痛めてしまいました。MRI検査の結果、腰椎分離症(第5腰椎)と診断され、鍼灸、カイロプラクティックなどで様子を見ていました。若干楽にはなったものの、動き出すと痛みが再燃してしまうことから、少しでも早くスポーツ復帰を果たしたいという希望で当院を受診されました。

診察時の所見

持参のMRI検査画像では典型的な腰椎分離症でした。動作を確認すると、後屈で中等度の可動域制限および疼痛誘発を認めました。疼痛緩和および、早期治癒を目指して、病的新生血管(モヤモヤ血管)に対する微細動脈塞栓術(運動器カテーテル治療)を受けていただきました。

治療の所見

第5腰椎近傍を主体として治療を行いました。特に腸腰動脈内側枝、および正中仙骨動脈にて治療時に再現痛を認めました。その他複数箇所の治療を行い終了しました。
*再現痛とは、薬液投与時に普段の痛みが一定程度再現される現象です。責任血管の同定のための参考とします。特に腰臀部領域では、モヤモヤ血管を視認することが困難なことが多いため再現痛の確認は重要です。

治療後の経過

治療後2週間、痛みなく経過していました。しかし、コルセットをガチガチに付けて運動も控えているため、まだ本当に良くなっているのかは不明でした。スポーツ復帰については、かかりつけの整形外科医と相談のうえで検討していただくこととしていました。その後、治療後1ヶ月半を過ぎた頃にMRI検査を受けたところ、分離していた骨の癒合が確認されました。治療後3ヶ月半のCT検査でも骨癒合していました。バスケットボールにも復帰しており、腰痛は少し見られる程度でした。治療後半年、コルセットはしているものの、バスケットボールは問題なくプレーできており、痛みは消失していました。

腰椎分離症は10歳代に好発します。スポーツが原因であることが多いですが、一定期間安静を要する疾患であり、骨癒合しないまま成人に達すると将来に亘り慢性腰痛の原因になります。しっかり治すことが重要ですが、一方で痛みをこらえてスポーツを続ける、復帰を焦るなど、十分な安静を保てないまま運動負荷を重ね続けることで治らない、あるいは安静にしていたとしても治らなかったという事例が少なくありません。モヤモヤ血管は外傷後の治癒遅延に関わっており、これまでも骨折後の長期間の治癒遅延に対してカテーテル治療を行うことで治癒が促進された事例などが報告されてきました。本症例でも、実際にMRIやCT検査で骨癒合を確認しましたが、まずは何より治癒できたこと、そしてその治癒期間を短縮できたことについて大変喜んでいただけました。運動器カテーテル治療は、疼痛緩和だけでなく、早期治癒、早期スポーツ復帰を目指す方にとって良い治療選択肢の一つだと思います。

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