肩:肩こり・四十肩・五十肩

【30代:女性】原因不明の左側に偏って生じた頬の張り、頭・耳・首・肩・腕の痛み。重症の顔こり、首肩こりに対するモヤモヤ血管治療(顔こり、首肩こり、筋・筋膜性疼痛症候群、頸肩腕症候群)

鴨井院長による動画解説

受診までの経過

1年2ヶ月前に、左頬の張りや歯茎が痒いような感覚を自覚し、歯科口腔外科で精査を受けましたが特に問題はありませんでした。脳神経外科で脳のMRIを撮りましたが同様に異常はありませんでした。その後1ヶ月程度で徐々に症状が落ち着きました。ところが、1年前に再発し、数か月の経過で症状が増悪しました。左頬~首の筋肉の張り感は以前よりも強くなり、頭痛、耳痛も伴い、さらに寝る際には首の置き所のない感覚がするようになりました。歯並びの変化が気になり改めて歯科口腔外科を受診しましたが、顎関節症等の指摘はなく、首の筋肉の張りが原因である可能性があるとのことでストレッチや運動をすすめられました。運動を取り入れたところ、肩が鉛のように重く感じるようになったため相談したところ、整形外科を紹介されました。首、肩、腰、股関節のMRI検査など精査を受けましたが、特に痛みの原因は見つからず、姿勢によるものではないかと言われました。耳鼻咽喉科やリウマチ科(膠原病精査のため)も受診しましたが特に異常は指摘されませんでした。その後は3ヶ月に亘り接骨院での施術および電気治療を受けた他、鎮痛薬(プレガバリン)や筋弛緩薬(ミオナール)の内服を続けましたが、施術後に3日くらい楽になることはあったものの芳しい改善は得られませんでした。左側の頬~首~肩~腕の広い範囲に亘り、筋肉の張り、痛み、使用後の症状の増悪、歯並びの変化について悩み、当院を受診されました。原因の一つは長時間のノートパソコン作業と思われましたが、いずれも増悪時期はインフルエンザワクチン接種後に該当するとのことでした。

診察時の所見

首の可動域は保たれていましたが、動作時に左側に筋性疼痛が誘発されました。握力は保たれていました。肩関節には特に問題はありませんでした。エコー検査では、左頸椎椎間関節の表層不整および周囲異常血流信号増生を著明に認めました。右側は整であり、血流信号も目立たず、明らかに有意差がありました。神経症状は伴っておらず、症状の分布からも頸椎症は否定的でした。頸肩腕症候群にさらに顔の症状も合併している状態であり、いわゆる重症の首肩こり、顔こりと診断しました(筋・筋膜性疼痛症候群)。治療適応と判断し、モヤモヤ血管(病的新生血管)に対する運動器カテーテル治療(微細動脈塞栓術)を受けていただきました。症状は左に偏っているものの、首肩こりは右も合併しており、両側の治療を行いました。

治療の所見

まず首肩こり治療を行いました。血管造影を行うと、主要責任血管である頸横動脈、肩甲上動脈にてモヤモヤ血管が濃染像として描出されました。続いて顔面および頭部の治療を行いました。顔面動脈、後頭動脈で同様にモヤモヤ血管が濃染像として描出されました。いずれも治療後は画像上速やかに消失しました。これらの他、頬の責任血管である顎動脈で特に再現痛が認められました。その他複数箇所の治療を行い終了しました。
*再現痛とは、薬液投与時に普段の痛みが一定程度再現される現象です。責任血管の同定のための参考とします。

治療前画像:損傷を受ける、あるいは繰り返しのストレスにより発生した異常な新生血管
治療後画像:カテーテルを用いて塞栓物質を血管内に投与し新生血管を塞いだ状態
治療費用:治療する部位によって費用が異なりますのでこちらをご参照ください。
主なリスク・副作用等:針を刺した場所が出血により腫れや痛みを生じたり、感染したりすることがあります(穿刺部合併症)。造影剤によるアレルギー(皮膚のかゆみ・赤み・息苦しくなるなどの症状)が出ることがあります。

治療後の経過

治療後2週間、治療に伴う軽めの頭痛が続き、まだ多くの症状は変化がありませんでした。その後おさまり、元々あった頭痛の頻度や程度も減ってきました。治療後1ヶ月半、よく眠れるようになりました。鎖骨辺りの症状が和らぎました。頬の症状も緩和されてきたものの、まだ首肩の症状が強く、全体としては2-3割減といったところでした(7-8/10程度;治療前の痛みを10とした場合)。治療後2ヶ月、改善が進み頬や首の症状が良くなってきました。特に起床時の首の痛みはだいぶ軽減されました。一方、肩~腕の痛みやこりはまだまだ残っていました。6/10程度とのことでした。治療後3ヶ月、顔の症状は8割方改善しほぼ気にならなくなりました。肩~背中は良い時で5/10程度でありまだ辛い状態でした。それでも以前は10-15分ほどしか続けられなかったデスクワークが1日続けられるようになりました。プール、ヨガと運動も始めました。一定の改善は得られているものの、まだまだ辛い状態であったため、ご相談の結果、治療後半年時点で2回目の治療を行うこととなりました。このとき、歯科矯正を始めたことで肩こりが増してしまったと申告がありましたが、矯正開始時のストレス反応によりこりが増悪することはあるものの、長期的には矯正するメリットのほうが大きいとご説明しました。顔の症状は十分とれているため同部の治療は行わず、首~肩のほか、肘および前腕に至るまで範囲を拡げて治療しました。治療後3週間、左上腕の痛みが軽減されてきました。治療後2ヶ月、首肩こりはやはり大きく変わったという感覚はありませんでしたが、2回目治療前に比べると体が軽くなった感覚がしてきました。左上腕はさらに楽になりました。治療後3ヶ月、全体的に改善が進み、2回目の治療効果も実感できたと言われました。歯科治療を継続しているため中々ゼロにはならないものの、顔や背中の症状は気にならなくなりました。右側の症状はほとんど無くなりました。左頸部~肩のこりがまだ残っていましたが、上腕の痛みも軽減されました。経過良好であり、運動や睡眠、負担軽減の取り組みについて種々アドバイスし、一旦終診となりました。歯科矯正はしばらく続くため、そのストレスについては少し懸念がありますが、ここまでくれば一安心です。残りの症状については、カテーテル治療のほか、左側のみ局所的に肩こり動注治療を行うなどの選択肢があります。ご希望に応じて対処していく方針です。

本症例では、当初、種々の診療科を繰り返し受診して念入りに全身精査が行なわれており、その症状の深刻さを物語っていました。改善されて本当に良かったです。頻度の高い典型的な首肩こりではなく、重症の頸椎症かと思われるほどの腕にまで及ぶ広範囲の症状、さらには顔面の症状も合併した重症の筋・筋膜性疼痛症候群でした。こうした場合、その方の姿勢や体のバランスおよび習慣などから症状は片側に大きく偏っていることが多いです。モヤモヤ血管(病的新生血管)に対する運動器カテーテル治療(微細動脈塞栓術)の良い適応であり、治療には良く反応しますが、中々単回の治療で満足するレベルに達しないこともあります。本症例でも2回の治療を要しました。尚、顔こりについては単回の治療でもほぼ軽快することが多いです。こりと言うと何となく軽い感じがするかもしれませんが、重症化するとこのように日常生活に大きく支障をきたすほどになります。痛みだけでなく、痺れや感覚障害、筋力低下、睡眠障害や鬱を伴うこともありますので、そうなる前にご相談いただければと思います。

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