肩:肩こり・四十肩・五十肩

【70代:男性】頸椎症による腕から指先の痛み、痺れ。外科手術以外の方法で少しでも楽になるために受けたモヤモヤ血管治療(頸椎症性神経根症)

鴨井院長による動画解説

受診までの経過

5年前から左肩が痛むようになりました。当初は痛みが出たりおさまったりでしたが、徐々に悪化し、四六時中痛み、さらには痺れるようになりました。症状の範囲も拡がり、今では、左頸部~肩~上腕~前腕(橈側)~母指と指先に及ぶようになりました。特に上腕の痛みが辛く、痛み止めも無効でした。整形外科では首で神経を圧迫されていると説明されていましたが、外科手術は受けたくないため何とか付き合ってきました。外科手術以外の方法で少しでも楽になればと思い当院を受診されました。

診察時の所見

首の動きは全ての動作で中等度の制限はあるものの、疼痛やしびれの誘発はありませんでした。軽度の握力低下を認めました。首肩こりも比較的高度でした。レントゲンでは、椎間孔狭窄、椎間板腔狭小化などの頸椎変形を認めました。前医診断も含めて総合的に判断し、頸椎症性神経根症と診断しました。外科手術が考慮されるところですが、ご本人の強い希望により病的新生血管(モヤモヤ血管)に対する微細動脈塞栓術(運動器カテーテル治療)を
受けていただきました。尚、一定の改善は期待できる一方で、外科手術の代替になるわけではなく、症状の改善には限界があることを予めご理解いただきました。

治療の所見

頸椎周囲の治療を行った後、首と肩の間、いわゆる肩こり部位の治療を行いました。血管造影を行うと、特に肩甲背動脈、頸横動脈造影にてモヤモヤ血管が濃染像として豊富に描出されました。治療後は画像上速やかに消失しました。その他複数箇所の治療を行い終了しました。

治療前画像:損傷を受ける、あるいは繰り返しのストレスにより発生した異常な新生血管
治療後画像:カテーテルを用いて塞栓物質を血管内に投与し新生血管を塞いだ状態
治療費用:税込324,500円〜357,500円
主なリスク・副作用等:針を刺した場所が出血により腫れや痛みを生じたり、感染したりすることがあります(穿刺部合併症)。造影剤によるアレルギー(皮膚のかゆみ・赤み・息苦しくなるなどの症状)が出ることがあります。

治療後の経過

治療後2週間、まず背中の症状がとれました。治療後1ヶ月、首筋や肩が良くなってきましたが、まだ上腕の痛みは残っていました。治療後2ヶ月経っても、やはり上腕~母指の一定の痛みおよび痺れはとれませんでした。首肩はさらに楽になり、以前のように寝られないほど痛いということはなくなりました。その後も大きくは変わりませんでしたが、腕の痛みだけなので、ある程度は付き合っていけばよいと思っていると言われました。外科手術については、受けてもその症状が改善するかどうかはわからないと言われていることもあり、合併症のリスクもあるため、やはり受けたくないとのことでした。幸い病状は安定しているため、少しでも今の状態を長く維持できるよう、時折ハイドロリリース注射などを行いながら様子を見ているところです。
カテーテル治療では骨による強烈な神経圧迫を治すことはできません。それ以外の組織に働きかけることで神経の圧迫を緩めたり、血流を改善したりすることにより頸椎症性神経根症に対しても有効ですが、頸椎での決定的な神経圧迫がある場合、外科手術の代替になるわけではありません。それでも、本症例のように一定の症状を改善させることは可能ですし、より程度が軽ければ、完治する場合もあります。頸椎症と診断されても外科手術の適応ではない、適応であっても手術を受けることができない、あるいは絶対に受けたくないなど様々な状況があるかと思います。いずれの場合でも、一定以上の症状改善は期待できますので、お困りの方はあきらめずに運動器カテーテル治療をご検討いただくとよいと思います。

頸椎症性神経根症の詳しい病状説明はこちら

 
 

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