肩:肩こり・四十肩・五十肩

【40代:女性】6年間続いた肩の痛みが1ヶ月で消失~石灰沈着性腱板炎に対する運動器カテーテル治療~(石灰沈着性腱板炎)

鴨井院長による動画解説

受診までの経過

6年前から右肩の痛みが続いていました。当初は五十肩と言われていましたが、5ヶ月前にMRI検査を受けたところ、石灰があると言われ、注射を受けました。1週間くらいは楽になりましたが、その後戻ってしまったため当院を受診されました。

診察時の所見

前方から反対の肩に手を回せない、お尻に手を回せないなどの可動域制限(外転は120度
)を認めました。レントゲンでは腱板石灰を認め、同部位をエコーで観察すると、肩甲下筋腱に沈着した石灰、および周囲異常血流増生を認めました。石灰は比較的薄く広範囲に分布していました。その他の腱板は保たれていました。診断は、石灰沈着性腱板炎です。モヤモヤ血管(病的新生血管)に対する運動器カテーテル治療(微細動脈塞栓術)の適応であり治療を受けていただきました。

治療の所見

血管造影を行うと、胸肩峰動脈、肩甲回旋動脈の肩甲上動脈領域などでモヤモヤ血管が濃染像として描出されました。治療後は画像上速やかに消失しました。

治療後の経過

治療翌日から改善し、痛みが軽くなりよく眠れるようになりました。治療後2週間、腕もだいぶ動かせるようになりました。治療後1ヶ月時点で痛みは完全に消失していて、1ヶ月半の確認時には、後ろに手を回す動作で少し制限があるものの、その他の可動域制限は完全に回復していました。エコー検査をすると、石灰もほぼ消失していました。非常に経過良好であり終診としましたが、治療後3ヶ月の追跡時にも再発なく、その後も痛みなく過ごしています。
6年前から続いていた肩関節周囲炎としては、可動域も含めて非常に早期から改善した症例でした。これだけ長期に及ぶと石灰は厚みがあり、治療して症状が改善した後も残る場合がありますが、ほぼ吸収されて消失しました。石灰形成は6年前からではなく、5ヶ月前頃に起こったものであったのかもしれません。石灰沈着性腱板炎は五十肩よりも炎症が強いことが多く、夜間痛や可動域制限がひどくなる場合も少なくありません。石灰を注射で吸引したり、石灰を除去する手術が行なわれたりすることもありますが、炎症を鎮める治療ではないので、痛みは変わらなかったり、侵襲によりかえって痛みが増してしまうこともあります。一方、カテーテル治療の場合は、より本質的に炎症を強力に鎮めるように働きますので、長期に経過していなければ、痛みが改善された後、遅れて石灰は自然に吸収されます。石灰沈着性腱板炎はカテーテル治療の良い適応疾患の一つです。

石灰沈着性腱板炎の詳しい病状説明はこちら

 
 

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