鴨井院長による動画解説
受診までの経過
3年半ほど前に、右大腿~膝上外側に痺れたような張りのような違和感が生じました。MRIで腰椎ヘルニアと診断され、鎮痛薬を処方されました。その後腰全体に筋肉痛のような痛みを感じるようになりました。1時間の歩行で腰痛が出ていました。介護職に従事しているうちに、疲れやすくなり、仕事終わりに買い物をしていると、レジでの会計待ちをしている間に腰部全体がギューッと締め付けられるようになりました。勤務時間を減らしながら、何とか仕事を続けていましたが、2年半前からは右下肢の症状(ジーンとした痛み、熱い感覚)をより強く伴うようになりました。リリカを服用することで楽になりました。しかし、その後も持続し、腰部の不安定な感じもするためMRIを再検したところヘルニアはむしろ小さくなっていました。筋肉が硬くなっている可能性を指摘され、トリガーポイント注射、電気治療などを受けて起床時の臀部痛は改善しましたが、立位や歩行時の特に右臀部がギューッと締め付けられる症状は変わりませんでした。1年半前からは、ペインクリニックにて硬膜外ブロック、大腰筋ブロック注射を受けることで注射後2-3日は楽になりました。その後も大きくは変わらず、自分自身で検索して、上殿皮神経障害と中殿皮神経障害を疑い別の医療機関を受診しました。4回目のMRIを含めて検査を受けた結果、脊柱管狭窄やヘルニアの痛みではなく、上殿皮神経障害、中殿皮神経障害、梨状筋症候群が考えられると言われました。総合病院に紹介され、上殿皮神経ブロックを受けると、20日間ほどは楽になりこれについて確定診断となりました。しかし、その後治療を続けても根本的な解決は得られず、夜間は右腰を少し動かすだけでも痛むし、仕事中に前傾姿勢をとると骨盤上部が重く怠い、立位ではジーンとした腰痛が生じる、脂汗が出てくるようなしんどさがある、長い時間歩くとギューッと右臀部が痛くなり、その際大腿も痛くなる、体重をかけたり、方向転換したりする際にはズキッと臀部の奥が痛むなどの症状で悩んでいました。当院の治療を知り受診されました。
診察時の所見
腰や股関節の可動域は問題ありませんでした。腸骨稜および梨状筋での圧痛は明瞭でした。レントゲンやMRI検査では症状の原因となるような明らかな異常はなく腰椎性腰痛は否定的でした。症状は右側に偏っており、持続的な坐骨神経痛は合併していないものの下肢への放散痛もみられました。当院としても、右上殿皮神経障害、右梨状筋症候群に合致すると判断しました。それに加えて仙腸関節障害も合併していると思われました。構造的な異常や神経障害の程度が強くないことから、モヤモヤ血管(病的新生血管)に対する運動器カテーテル治療(微細動脈塞栓術)による症状の改善が期待されたため治療を受けていただきました。
治療の所見
右側を重点的に、両側の治療を行いました。右側では下肢症状も伴うことから、特に腰椎~股関節周囲レベルまで広範囲に治療しました。


治療後の経過
治療後2日ほどは、臀部があったかい感じがして眠りが浅かったのですが、その後夜間痛がほぼ無くなり、ぐっすり眠れるようになりました。治療後1週間、臀部の冷えが解消されました。以前は仕事が終わって帰宅すると疲れ果てていたのですが、帰宅後すぐに家事に取り掛かれるようになりました。仕事中の動作で痛みを感じることがあったのですが、それも無くなりました。もっと早く受診すればよかったと言われました。治療後1ヶ月半、寒さが厳しくなったためか、日中は気にならないものの、就寝時や起床時に右臀部の痛みが少し増したように感じました。その後、右臀部上外側の一定程度の痛みが残存し、注射加療を続けていました。注射をすると楽になりましたが、腰を反らす動作や、座り方によっては右腰臀部の痛みが出ていました。仙腸関節障害が主体と考えられたため、仙腸関節注射を行うとそうした症状は解消されてきましたが、より限局した上殿皮神経障害の痛みが気になるようになりました。治療後6ヶ月、術前の痛みとは比べものにならないくらい柔らかい痛みではあるものの、痛みがすごく楽に感じられる日があった頃よりは少し痛みが増しているため追加治療について検討することとなりました。2回目の治療を受けた後もぶり返すことや、ヘルニアや辷り症の痛みが出てくることもあるのではないかなどご不安も多かったのですが、最終的には残った症状をしっかり解消したいとのご希望で2回目の治療を行うこととなりました。治療後1ヶ月、右臀部上部の朝の痛みや押したときの痛みがとれてきて、治療後2ヶ月を過ぎたくらいから一気に改善しました。腰を反らすと痛いかなという程度となりました。念のため長期経過観察することとし、治療後4ヶ月半までフォローアップしましたが、痛みはほぼ消失し、ぶり返すことなく経過しています。介護職は大変身体的な負担が大きい仕事であり、また痛める懸念もありますが、少なくとも最初のような状態に戻ることはありません。身体が不自由な方のために頑張ってこられた方です。当院としても、これからもできる限り支えていきたいと思います。