首:首こりなど

【50代:男性】5年間苦しんだ頸椎/腰椎レーザー手術後遺症による痛み、突っ張りに対するモヤモヤ血管治療(頸椎/腰椎レーザー手術後遺症、固定術後、神経障害)

鴨井院長による動画解説

受診までの経過

5年前に首と腰に痺れがあり、頸椎および腰椎にレーザー治療を受けたところ左半身側面のしびれ、両手指(3-5指)、両手首、両足首のしびれが新たに生じました。不全麻痺のような症状が増悪し、ついには歩行困難になってしまいました。その後複数回手術を受けましたが、最終的に2年前に頸椎固定術を、その半年後に腰椎固定術を受けました。頸椎手術後、徐々に立ち上がれるようになり、腰椎手術後には腰痛が改善して歩けるようにもなりましたが、歩行可能な距離は300m程度でした。足に感覚が無く、痛みや痺れがあるかどうかもよくわかりませんでした。全身がひどく突っ張っているような感覚が続いていました。痺れや突っ張りで寝られないため睡眠薬を服用して寝ていました。一連の症状は入浴で多少楽にはなりました。かかりつけの医師にすすめられて当院を受診しました。

診察時の所見

固定術後の割には、頸部・腰部とも可動域は保たれていました。手術侵襲、長期間に及んだ筋緊張亢進状態、拘縮ならびに血流障害などに伴いモヤモヤ血管が深く関与していることは明らかでした。一方、明らかな神経障害後でしたので、モヤモヤ血管(病的新生血管)に対する運動器カテーテル治療(微細動脈塞栓術)の効果には限界があります。治療後の予想される経過として、こり・張りの改善、動作が楽になるなどの効果は期待できる一方で、痺れや麻痺を含む感覚障害については無効である可能性が考えられました。これまでリハビリも含めて頑張ってきたが、他に全く方法がないため良くなる可能性があるなら受けたいという強いご希望があり、頸部、腰臀部の順に治療を受けていただくこととなりました。

治療の所見

まず頸部および肩甲骨周囲の治療を行いました。血管造影を行うと、深頸動脈、肩甲上動脈などでモヤモヤ血管が濃染像として豊富に描出されました。治療後は画像上速やかに消失しました。治療後から、右手甲の突っ張り感が少し楽になっていると言われました。

治療後の経過

治療直後から改善が進み、2週間後には腕の突っ張りが大幅に減りました。リハビリ担当者からも柔らかくなったと驚かれたそうです。痺れはとれていないが、こんなによくなるとは思わなかった、腰の治療も早く受けたいと言われ、頸肩部治療から3週間後に腰臀部の治療を受けていただきました。腰椎~股関節周囲レベルまで広範囲に治療を行いました。2週間すると、右膝が軽くなり、左下腿の突っ張りが無くなりました。治療するたびに早期から改善するため、両下肢の治療もご希望されました。右は膝より下、左は大腿・膝・下腿・足首・足と広く治療を行いました。右足甲では、モヤモヤ血管が明瞭に描出されました。治療後2週間すると、両足とも土踏まずの突っ張りがなくなりました。その後、ハイドロリリース注射などを行いながら外来通院中ですが、最初の治療から半年後の状態としては、『全体的に突っ張り感が良くなった。その分歩行を含めて動作がスムーズになっている。痺れは残っている。両手3-5指、足趾が痺れている。全体的に左半身が不調。腰の痛みはとれている。』といった具合です。やはり、神経障害後遺症を治すは困難ですが、種々の作用を通して突っ張り感や動作が改善されることにより日常生活動作としては大幅に向上しました。残存症状の改善を目指して、引き続きサポートしていきたいと思います。病的新生血管に対する微細動脈塞栓術は、これまでの常識を覆した、非常に有効性の高い治療方法ですが、どのような症状でも治せるわけではありません。完成された神経障害(長期間経過)、外科手術の合併症、特に脊椎固定術後の障害については無効の場合があります。本症例では、レーザー治療により神経障害が生じた一方、固定術による合併症はありませんでしたので、治療による一定程度の症状の改善が期待できました。また、『治せるところを治す』という考えも重要です。全てを諦めずに、思い切って治療を受けていただいた結果、改善されて本当に良かったです。

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