肩:肩こり・四十肩・五十肩

【60代:男性】肩をすくめると痛い、いつまでも治らなかった肩鎖関節の痛み(肩鎖関節炎)

鴨井院長による動画解説

受診までの経過

1年ほど前から、肩をすくめるような動作や、腕を後ろに回すような動作をする際に右肩鎖関節に痛みを生じていました。可動域には問題がなく動かすことができるものの、肩鎖関節を押すと痛みがありいつまでも治らないため当院を受診されました。

診察時の所見

右肩関節の可動域は保たれていました。肩鎖関節に一致して強い局所性の圧痛がありました。エコー検査では同部位に異常血流信号を認めたほか、レントゲンでは関節の隙間がかなり狭くなっていました(関節裂隙の狭小化)。日常生活に大きな支障はないものの、長期間に亘り改善せず、鎮痛薬によるコントロールもできないことから微細動脈塞栓術(運動器カテーテル治療)を受けていただきました。

治療の所見

胸肩峰動脈造影を行うと、その分枝である肩峰枝の末梢で、肩鎖関節に一致してモヤモヤ血管(病的新生血管)が濃染像として描出されました。他にも、肩甲回旋動脈の上行枝において同様に濃染像を認めました。いずれも治療後は画像上速やかに消失しました。

治療後の経過

治療後1ヶ月を過ぎる頃、痛みは大幅に軽減し、圧痛は消失しました。その後、筋力トレーニングなどで一時的に悪化するということもありましたが、当初の痛みほどではなく休めることで速やかに改善しました。治療後3ヶ月、日常生活で痛むことはなく、時々、肩をすくめた際に少し痛みを感じることがあるという程度でしたので終診としました。肩鎖関節炎の経過は個人差がありますが、比較的強い炎症が生じた場合は夜間痛を伴い五十肩のように強く痛むこともあります。一方、本症例のように押すと痛む、一定の動作で痛むのがいつまでも治らないという場合もあります。肩鎖関節炎は、比較的限局性の強い炎症であり、カテーテル治療後は劇的に改善しますが、構造的な異常が原因であるため、ある程度まで進行している場合は、完全にはとりきれないこともあります。そうした場合、鎮痛薬が不要となるレベルに鎮めるというのが一つの目標となります。押すと痛い、夜間痛がある、鎮痛薬が効かない、あるいは手放せない、いつまでも治らないなどといった場合は、積極的に治療を検討していただくとよいかと思います。

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