鴨井院長による動画解説
受診までの経過
10年前からの酒さです。熱いものを食べた時や入浴時に顔面に酒さが生じました。夏よりも冬に症状が強くなり、暖房が効いている部屋に入るのが特に辛く感じました。腫れたりはしませんでしたが、赤みがひどくなると、ビリビリと痛みました。左右差はなく、頬が主体ですが、額や顎にも多少生じました。数年前からは口の周りの肌荒れも目立つようになりました。顎関節症、食いしばり、頭痛などはありませんでした。
発症当初、内服薬や塗り薬を処方されましたが、効果が無く止めました。その後、医療機関では酒さとさえ言ってもらえず、あまりとりあってもらえなかったそうです。2年前に皮膚科でフォトフェイシャル(IPL;Intense Pulsed Light)を5回受けましたが、やはり効果がありませんでした。こうした経過で、もう一生治らないかと思い悩んでいた折、当院の治療を知り受診されました。(当院の治療を見つけた時には涙が出たほどだったということです)
診察時の所見
診察時には軽度の赤みが見られる程度で、客観的にだれが見ても赤いとわかる状態ではありませんでした。増悪時は帯状にかなり赤くなるということで写真を見せていただくとまさにその通りでした。酒さの状態は非常に幅が広く、普段はほとんどわからない場合もあります。酒さはモヤモヤ血管が関与する疾患の一つです。皮膚の性状も保たれていましたので、治療による改善が期待できると判断し、モヤモヤ血管(病的新生血管)に対する運動器カテーテル治療(微細動脈塞栓術)を受けていただきました。
治療の所見
顎や口の周囲などに分布する顔面動脈、頬の主要責任血管である顎動脈で特にモヤモヤ血管が濃染像として描出されました。治療後は画像上速やかに消失しました。その他複数箇所の治療を行い終了しました。
他疾患と比較した場合、まず、酒さでは血管が非常に良く発達しています。そして、比較的目立ちにくい顔面においてもモヤモヤ血管がはっきりと描出されることが多いです。薬液投与量も顔こりの症例などに比べると必要量が増える傾向があります。顔面の疾患に対して治療をすると刺激がすごく強いのではないかとご不安になられる方も多いですが、皆様の感想をお聞きしていると、普段の酒さの症状の方が強いので、それほどの不快感はなかったと言われることが多いです。ご安心いただいて大丈夫かと思います。治療中の過剰な痛みは見られませんでしたが、頬に灌流する顎動脈治療時に再現痛が最も強く認められました。終了後は感極まって涙を流されました。安静後の離院時にも不快感はなく、笑顔で明るい表情でお帰りになられました。
*再現痛とは、薬液投与時に普段の痛みが一定程度再現される現象です。責任血管の同定のための参考とします。
治療前画像:損傷を受ける、あるいは繰り返しのストレスにより発生した異常な新生血管
治療後画像:カテーテルを用いて塞栓物質を血管内に投与し新生血管を塞いだ状態
治療費用:治療する部位によって費用が異なりますのでこちらをご参照ください。
主なリスク・副作用等:針を刺した場所が出血により腫れや痛みを生じたり、感染したりすることがあります(穿刺部合併症)。造影剤によるアレルギー(皮膚のかゆみ・赤み・息苦しくなるなどの症状)が出ることがあります。
治療後の経過
治療後2週間、日によっても異なるためまだはっきりは分かりませんでしたが、赤くなる時もあるものの少し症状が和らいだ感じがしました。治療当日は特に効果は感じなかったものの、その後に変化してきたとのことでした。治療後1ヶ月半、順調に改善が進み、火照りは半分くらいに、痛みはゼロでした(但し時期的には、例年それほどひどくない時期でもあるとのこと)。ところが、乾燥が気になり洗顔料を変えたところ、湿疹と赤みが出現し、火照りも再燃してしまいました。アレルギーだと思い直ちに中止し、1週間くらいで治まってきました。せっかく良くなっていたのに申し訳ないと言われましたが(当院にお気遣いいただくことの方が恐縮ですが)、一旦治療効果を実感できたことで悲観する様子はありませんでした。このときが治療後2ヶ月でしたので、もう1ヶ月様子を見ていただくこととしました。治療後3ヶ月、回復し、ビリビリ・ズキズキする痛みは一度も起きていないということでした。火照り・赤みも元の状態の7割方が改善しました。まだ全くないわけではないものの、かなり改善したと明るくご報告いただきました。今後、残存症状に対して2回目の治療を予定しているところです。
酒さは、身体的な変化だけでなく、心理的にも強く影響を及ぼす疾患です。その深刻さが中々周囲に理解してもらえず、さらに苦しみます。私自身、医師の立場で、本当にその苦しみを理解することはできていないのではないかと思います。まだまだ、患者様から学ぶことも少なくありません。この方は、子供の行事にも出られないのが辛いと吐露されていました。大変、いたたまれない気持ちがいたしました。今後も様々な思いを受けとめて、私自身がまず理解者の一人となり、少しでも力になれるよう情熱を持って治療に当たっていきたいと思います。多くの方がこうした症状で苦しんでおられます。どうぞ頼ってください。全ての方に有効と言うわけではありませんが、VビームやIPLレーザー治療とは全く異なる機序で作用する新しい治療方法ですので、ぜひご相談いただければと思います。


