腰:椎間関節炎など 【60代:男性】15年前からの慢性腰痛が急激に悪化して夜も寝られず・・ヘルニアは悪さをしていないなら原因は?(筋・筋膜性疼痛症候群、仙腸関節障害、腰椎椎間板ヘルニア) 2025.12.23 鴨井院長による動画解説 受診までの経過 15年前から慢性的に腰痛がありました。1年前にひどい痛みと脱力に襲われ、MRI検査を受けたところ、腰椎椎間板ヘルニアと診断されました。手術も検討していましたが、自然軽快し、再び歩けるようになりました。しかしながら、右側の腰痛は軽快したものの、左側の強い腰痛が残っていました。ヘルニアで強く圧迫されていたのは右側の神経であったため、整形外科では首を傾げられました。じっとしていると増悪し、長時間の立位でも増悪しました。そのため、夜痛みで寝られないことが多く、起床後も11時くらいになってようやく動けるようになる状態でした。 *50年前に腸骨骨折の既往あり 診察時の所見 MRI検査を確認すると、やはりヘルニアで圧迫を受けているのは右側であり、ヘルニア所見と症状は合致しませんでした。腰の可動域をチェックすると。すべてに動作において中等度の制限がありました。股関節の内外旋動作では可動域は保たれているものの、動きに抵抗があり比較的高度の硬さがありました。触診では、第2―4腰椎レベルでは左腰部の筋肉部において有意に圧痛が認められました。レントゲンでは、左上前腸骨棘を中心に腸骨に骨表層不整像や骨硬化像が見られており、同部位に付着する腸骨筋、縫工筋、大腿筋膜張筋が関与する筋・筋膜性の障害が示唆されました。いずれも股関節の動きに関与する筋肉です。腸骨にはほかに腸腰筋や臀筋が関与し、いずれも腰臀部痛の原因として重要です。こうした腸骨の変化や、筋硬直、その他の特徴的な身体所見から総合的に判断して、筋・筋膜性疼痛症候群を主体として、仙腸関節障害も合併している状態と判断しました。骨盤の不安定性が一因ですので、腸骨骨折の既往とも関係があるかもしれません。以上より治療適応と判断し、モヤモヤ血管(病的新生血管)に対する運動器カテーテル治療(微細動脈塞栓術)を受けていただきました。 治療の所見 第2腰動脈~第4腰動脈の筋肉枝を選択的に治療し、さらに、腰痛の主要責任血管の一つである腸腰動脈や外側仙骨動脈、臀筋群に関与する上殿動脈、下殿動脈、股関節の動きにも関わる閉鎖動脈やその他の筋肉枝など複数個所の治療を広範囲に行いました。 治療後の経過 治療後2週間、まだ大きな変化はないものの、痛みが少しましになったほか、寝られる日が多くなってきました(以前は痛みで寝られないことが多かった)。治療後1ヶ月半、時々痛むことはあるものの、だいぶ良くなってきました。痛みで寝られないということは無くなりました。『本当に寝られなくて辛かったので嬉しい、何十歳か若返ったように思う』と大変喜ばれました。まだ左腰部に1か所だけ、塊のように感じる部分が残っているものの、それもだいぶ柔らかくなりました。治療後3ヶ月、塊の部分はやはり一定の違和感があるものの、痛みは感じなくなりました。全体的には疲れると疼くように痛むことがあるものの、元の7割程度の痛みは解消されました(3/10程度に改善)。夜寝られないほどの腰痛というのはかなり重症度が高いわけですが、これほどの状態であっても、MRIで原因がわからないことは珍しくありません。丹念に診察をして原因を見つけ出し、治療を行うのが痛み治療専門医師の腕の見せ所ですが、良い結果が得られて本当に良かったです。残存症状については追加カテーテル治療が有効ですが、生活習慣の改善や運動療法を地道に行っていくことでさらなる緩和が期待できます。引き続きしっかりとサポートしていきたいと思います。 本症例では、とにかく体の硬さや筋硬直が根底にありました。こうした状態では、腰痛はほぼ必発です。骨格のほか、運動不足や、過剰なトレーニング、急激な体重変動、加齢などが原因です。懸念のある方は、発症予防、再発予防のために硬さの解消に取り組んでください。原因により対処方法は異なりますが、日常的に軽めの運動を取り入れることはいずれの場合も有効です。 筋・筋膜性疼痛症候群の詳細はこちら 【70代:男性】頭痛、こめかみ・眉上の痛み、耳鳴り~頭部顔面の帯状疱疹後遺症に対するモヤモヤ血管治療(帯状疱疹後遺症) 前の記事 【50代:女性】8年前からの両膝・両足首の痛みに加えて踵まで痛み平地歩行もままならず・・進行性の変形性膝関節症および足関節症、足底筋膜炎の合併例に対して2回の運動器カテーテル治療を行った症例(変形性膝関節症、変形性足関節症、足底筋膜炎、肥満) 次の記事