膝:変形性膝関節症など

【50代:女性】長い距離を歩くと痛くなる、登山家に生じた両膝の痛みに対するモヤモヤ血管治療(膝蓋下脂肪体炎、腸脛靭帯炎)

鴨井院長による動画解説

受診までの経過

日常的に登山をされる方です。10年前に階段で転落してコンクリートの地面に両膝を打撲したことがありました。以前から、登山下山時に両膝が少し痛くなることがありましたが、1年半前頃に3-4時間程度の登山後に強い痛みがあったため、整形外科を受診しました。MRI検査の結果、軟骨の磨り減りはほとんど無く、膝蓋下脂肪体炎が疑われると言われました。2km以上歩くと痛くなり、その後2-3週間すると痛みが無くなります。3km以上になると、激痛になります。左右差は特にありませんでした。常に激痛があるわけではないものの、段々と歩ける距離が減ってきているため当院を受診されました。

診察時の所見

レントゲン、エコー検査とも変形性膝関節症の所見はありませんでした。膝蓋下脂肪体では、軽度の圧痛を認めました。MRIでも明らかな強い炎症ではありませんでしたが、両側膝蓋下脂肪体炎として矛盾せず、症状の性状からも治療による改善が期待されたため、モヤモヤ血管(病的新生血管)に対する運動器カテーテル治療(微細動脈塞栓術)を受けていただきました。

治療の所見

血管造影を行うと、両側の内側下膝動脈において、膝蓋下脂肪体に一致してモヤモヤ血管が濃染像として描出されました。更に左外側上膝動脈造影では、より豊富にモヤモヤ血管が濃染像として描出されました。術前の画像診断では明確ではありませんでしたが、症状の成因や、性状、この血管造影所見からは腸脛靭帯炎(代表的な、膝の外側の痛みの原因の一つ。別名ランナー膝。)の様相を呈していました。腸脛靭帯炎も合併していたのではないかと考えられます。治療後モヤモヤ血管は画像上速やかに消失しました。その他複数箇所の治療を行い終了しました。

治療前画像:損傷を受ける、あるいは繰り返しのストレスにより発生した異常な新生血管
治療後画像:カテーテルを用いて塞栓物質を血管内に投与し新生血管を塞いだ状態
治療費用:治療する部位によって費用が異なりますのでこちらをご参照ください。
主なリスク・副作用等:針を刺した場所が出血により腫れや痛みを生じたり、感染したりすることがあります(穿刺部合併症)。造影剤によるアレルギー(皮膚のかゆみ・赤み・息苦しくなるなどの症状)が出ることがあります。

治療後の経過

元々、少し長めに歩かなければ激痛は生じないため、治療後1ヶ月の直前に長めに歩いてみてもらいました。激痛は全く無く、階段を降りる際も、以前は他人の手を借りなければならなかったのが不要となっていました。まだ、熱い感じがしたり、それとは別に鈍い痛みを感じたりすることはありました。その後も順調に経過されたため、(良いことですが)受診はそれきりとなりました。追跡調査では、治療後3ヶ月時点で痛みは元の1/10程度、治療後6ヶ月ではほとんど痛みがゼロとなり、熱を持った感じも無くなりました。酷使して疲労が蓄積したときには鈍い痛みが出ることはありますが、それでも元の1/10程度とのことでした。膝蓋下脂肪体炎は比較的しつこい痛みの一つであり、完治するには少し時間がかかる傾向がありますが、ここまでくれば安心できます。無理のない範囲で登山を楽しんでいただければと思います。

膝蓋下脂肪体炎の詳細はこちら

 
 

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