腰:椎間関節炎など

【80代:女性】新型コロナウイルス感染を契機に悪化した変形性腰椎症による腰痛/坐骨神経痛(新型コロナウイルス感染、変形性腰椎症、腰痛、坐骨神経痛)

鴨井院長による動画解説

受診までの経過

20年前にゴルフ中に腰を痛めて以来、慢性的に腰痛を繰り返すようになりました。坐骨神経痛と診断され、ブロック注射などの治療を受けてきました。5年前から悪化してきましたが、新型コロナウイルスに感染したことをきっかけに痛みがさらに激しくなりました。ブロック注射も効かなくなってしまいました。仰向けで寝る分には痛みはない一方で、立位や歩行時に、特に左側の痛み・しびれが辛く感じていました。

診察時の所見

レントゲンでは一見して高度の腰椎変形を認め、歩くのもままならないくらいのもっと強い症状が出ていても不思議ではないくらいでした。腰の動きを確認すると、前屈で疼痛が誘発され、全ての動作において中等度以上の可動域制限がみられました。股関節の動きは保たれていました。後上腸骨棘では比較的強い圧痛が認められました。その他の診察所見と併せて、左坐骨神経痛を伴った変形性腰椎症、仙腸関節障害と診断しました。構造的異常は強いものの、神経障害としては固定化されておらず治療による一定の改善が期待されました。治療適応と判断し、モヤモヤ血管(病的新生血管)に対する運動器カテーテル治療(微細動脈塞栓術)を受けていただきました。

治療の所見

腰椎レベル~股関節周囲レベルにかけて広範囲の治療を行いました。左腰動脈、腸腰動脈などで特に再現痛を認めました。
*再現痛とは、薬液投与時に普段の痛みが一定程度再現される現象です。責任血管の同定のための参考とします。特に腰臀部領域では、モヤモヤ血管を視認することが困難なことが多いため再現痛の確認は重要です。

治療後の経過

治療後3-4日はとても楽でしたが、その後再燃し、午前中は楽に感じるものの、治療後2週間ではまだ大きく変わりはありませんでした。治療後1ヶ月、鼠径部に感じていた痛みは無くなりました。歩く時の痛みについてはまだ一部の改善にとどまっていました。治療後2ヶ月、入室時のご様子から既にこれまでと違っていて、歩容が改善してスムーズに入室されました。強い痛みは半減し、立ち上がりの際には痛むものの、歩いている内に無くなるようになりました。寝がえりの際の痛みも無くなりました。治療後2ヶ月半を過ぎる頃から、左側の痛みはほとんど無くなってきました。治療後5ヶ月時点でも痛みなく良い状態を維持できています。本症例では、長年くすぶり続けた慢性炎症が新型コロナウイルス感染を機に悪化したことが考えられました。高度の腰椎変形があり治療の有効性に懸念がありましたが、カテーテル治療は『強い炎症にはよく効く』という側面があります。感染を契機に悪化した症状には有効な可能性が高いです。

坐骨神経痛の詳しい病状説明はこちら

 
 

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