【50代:女性】変形はそれほどでもないのに水は溜まるし強い痛みが・・関節リウマチと判明した両膝の痛み（関節リウマチ、変形性膝関節症、首肩こり）

半年前に、右膝を痛めて整形外科を受診したところ変形性膝関節症と言われ、水を抜いたりヒアルロン酸注射を受けたりしていました。一旦改善したものの、１ヶ月前から急激に増悪し、痛みのために右下肢をかばったように歩くようになりました。夜間痛まで生じるようになり、当院を受診されました。

レントゲンでは膝関節の変形は目立たちませんでした。一方、エコー検査では膝に多量の水が溜まっていた（膝蓋上嚢水腫）ほか、滑膜増殖や異常血流信号が著明に認められました。強い滑膜炎を起こしている状態でした。微細動脈塞栓術（運動器カテーテル治療）の適応であり治療を受けていただきました。血液検査では特に炎症に関する値はいずれも正常範囲内であったものの、早期の関節リウマチである可能性が考えられたため併せて精査加療を進めることもご提案しました。

血管造影を行うと、ほぼ全ての血管においてモヤモヤ血管（病的新生血管）が造影剤の濃染像として描出されました。写真では、下行膝動脈造影、内側下膝動脈造影を示しています。早期の変形性膝関節症としては非常に旺盛にモヤモヤ血管を認めており、やはり関節リウマチ等の何らかの炎症性疾患の関与が示唆されました。それぞれ、治療後は画像上速やかにモヤモヤ血管が消失しました。

治療前画像：損傷を受ける、あるいは繰り返しのストレスにより発生した異常な新生血管
治療後画像：カテーテルを用いて塞栓物質を血管内に投与し新生血管を塞いだ状態
治療費用：税込324,500円
主なリスク・副作用等：針を刺した場所が出血により腫れや痛みを生じたり、感染したりすることがあります(穿刺部合併症)。造影剤によるアレルギー(皮膚のかゆみ・赤み・息苦しくなるなどの症状)が出ることがあります。

治療当日からほぼ痛みが無くなりました。他院で受けた関節リウマチの検査では陰性でした（否定されました）。治療後１ヶ月半、水腫も消失しました。正座もできるようになりました。ところが、治療後２ヶ月を過ぎた頃、痛みはそれほどないものの右膝が腫れてきたため急遽受診されました。エコーでは再び水が溜まっており注射加療を行いました。念のためMRI検査を行いましたが、やはり変形性膝関節症の所見としてはそれほど重症ではありませんでした。その後、関節リウマチであることが確定し、専門病院で治療を続けています。治療後半年、違和感はあるものの痛みなく過ごせていました。その後は徐々に落ち着き水腫は完全に消失しました。しかしながら、今度は首肩こりがひどいとのことで治療希望にて受診されました。むちうちなどがきっかけで、３０年前からありましたが、５年前から特にひどくなりました。鍼・マッサージなどで対応してきましたが、半月ほどで効果が無くなってしまうためより有効な治療を受けたいとのご希望でした。

治療の所見②
肩こりの標的血管の一つである頸横動脈、首こりの標的血管の一つである深頸動脈の血管造影にてそれぞれモヤモヤ血管（病的新生血管）が濃染像として描出されました。治療後は画像上速やかに消失しました。

治療後の経過②
治療直後は重い感じがしましたが、その後軽く感じられるようになりました。治療後１ヶ月半、『すごく元気になった』『首肩のこりも治療対象だとは思っていなかったが、こんなに楽になるならもっと早く受ければよかった』と言われました。起床時の倦怠感が改善しました。その後、時々凝りが気になってくるためハイドロリリース注射などの加療を不定期に行っていますが、カテーテル治療後はマッサージにほとんど行かなくなっているとのことです。

当院での受診をきっかけに関節リウマチが判明し、同治療と並行して両膝痛および首肩こりの治療を行いました。関節リウマチは本質的に免疫異常による血管炎を内在しているため、いわゆるモヤモヤ血管（病的新生血管）はできやすくなります。同じ負担がかかった場合でも炎症の度合いははるかに助長されます。そのため、安静時や夜間にも生じるような強い痛みに発展することが少なくありませんが、微細動脈塞栓術（運動器カテーテル治療）には非常によく反応します。本症例でも治療当日から症状が改善されました。しかしながら、原疾患である関節リウマチそのものの治療を行わなければ、再発したり他部位の関節痛が生じたりします。本症例では、リウマチを良好にコントロールすることで、両膝痛、首肩こりとも単回の治療で大幅に改善し安定しました。関節破壊が進行する前に早期に介入できてよかったと思います。関節リウマチは単回の検査では見つからず、時期を変えて繰り返し検査をすることで見つかることもあります。疑わしい場合は、時期を変えて複数回検査することも重要です。