鴨井院長による動画解説
受診までの経過
30年前から左臀部痛があり、少しずつ悪化してきました。半年前からは4時間ほど寝ると痛みで目が覚めてしまうようになりました。デスクワークで座っている分には大丈夫ですが、リクライニングできるような椅子にゆったりと座ると痛みました。安静時の痛みが主体であり、特に座位で左大腿に負荷がかかる状態が続くと痛みました。一定の残尿感もありました。立位・歩行・自転車乗車では痛みはありませんでした。マッサージが一時的には有効で、入浴でも楽になりました。泌尿器科通院を続けてきましたが、当院の治療を知り受診されました。
*潰瘍性大腸炎の既往あり
診察時の所見
腰の可動域を確認すると、回旋以外の動作で中等度の制限がありました。股関節の動作は問題ありませんでしたが、左股関節の内旋時に背部痛が誘発されました。左臀部では軽度の圧痛は認められたものの、特段の筋緊張や病的な硬さは認められませんでした。前医の腰椎MRI検査では異常は認められず、レントゲンでは仙腸関節の骨硬化像を認めました。典型的とは言えませんが、骨盤痛症候群、慢性前立腺炎、仙腸関節障害などが疑われました。夜間痛があり、一定の負荷による再現性のある疼痛が誘発されることから治療適応と判断し、モヤモヤ血管(病的新生血管)に対するカテーテル治療(微細動脈塞栓術)を受けていただきました。
治療の所見
血管造影を行うと、前立腺炎の主要責任血管である下膀胱動脈でモヤモヤ血管が濃染像として描出されました。治療後は画像上速やかに消失しました。その際、残尿感を感じていた部分に再現痛がありました。閉鎖動脈ではいつも感じる臀部~大腿の痛みについて再現痛がありました。その他腰臀部における複数個所の治療を行い終了しました。
*再現痛とは、薬液投与時に普段の痛みが一定程度再現される現象です。責任血管の同定のための参考とします。
治療前画像:損傷を受ける、あるいは繰り返しのストレスにより発生した異常な新生血管
治療後画像:カテーテルを用いて塞栓物質を血管内に投与し新生血管を塞いだ状態
治療費用:治療する部位によって費用が異なりますのでこちらをご参照ください。
主なリスク・副作用等:針を刺した場所が出血により腫れや痛みを生じたり、感染したりすることがあります(穿刺部合併症)。造影剤によるアレルギー(皮膚のかゆみ・赤み・息苦しくなるなどの症状)が出ることがあります。
治療後の経過
痛みは治療翌日から消失しました。椅子にゆったりと座ったときに生じる痛みも含めて消失しました。左鼠径部の奥~内腿がガチガチに感じていましたが、それも改善されました。治療後2週間では痛みではなく一定の痺れのみ残っていました。元々、背中~左大腿くらいまで痺れを感じており痛みが無くなることでより認識されるようになったようでした。痛みは消失したため、入浴前後で症状は変わらなくなりました。治療後3ヶ月、臀部に当たらないようなベッドに変えることで、同部の痺れが無くなり以前よりは眠れるようになりました。まだ非典型的な背中からの一定のしびれは残っているようでしたが、痛みが無くなり治療効果を実感できたため、残存症状についてはかかりつけの病院で引き続き診てもらうとのことで終診となりました。
本症例では骨盤底筋群を含めた筋・筋膜由来の症状、前立腺由来の症状が混在していたのではないかと推察されます。潰瘍性大腸炎という持病の存在もモヤモヤ血管の形成に少なからず関与していたものと思われます。夜間痛が生じるほどの状態でしたので、治療後の改善は非常に早期から得られました。眠れるようになり本当に良かったと思います。夜間痛、入浴前後での症状の大きな変化というのはモヤモヤ血管の関与を示唆する有力な症候の一つです。腰臀部痛やデリケートゾーンの痛みの中には画像診断では明確に診断をつけることができないことがありますが、そうした場合は症状の性状が非常に重要です。


