その他:帯状疱疹後など

【40代:女性】12時間に及ぶスクリーンタイム過多に起因するVDT症候群へのモヤモヤ血管治療

鴨井院長による動画解説

受診までの経過

8年前から、左側のみに、頭痛、首肩、肩甲骨、さらには上腕および肘、前腕に至るまで痛むようになりました。原因は左側の酷使ということでした。頸椎MRI・CTでは神経障害を示唆する所見は認められず、痛み止めを処方されましたが良くなりませんでした。週に2回鍼灸に通っても少ししか緩和されませんでした。顎関節症や歯ぎしりもひどいため、歯科ではインプラント他の治療に通院していました。入浴して温まると、唯一かなり楽になりますが、それ以外は自己流で鍼灸を焼けるくらいに行うと少し緩和される程度であり、何をやっても良くならないため当院を受診されました。

診察時の所見

まず一見して、見たことのないくらい左頸部~左上肢におびただしく鍼灸の痕跡があり驚かされました。傷害を受けたのかと思うほどでした。首、肩の可動域は問題ありませんでした。頸部や肩甲骨上方で圧痛が目立ち、エコーでは僧帽筋および周囲組織の線維化を高度に認めました(白く描出されます)。また、手首において左尺側手根伸筋腱の腱鞘肥厚を認めました。左側を酷使してきたことを反映していました。レントゲンでは頸椎が後弯していました。生活習慣を確認すると、睡眠時間は7時間確保しているものの、就寝時間が3時であり、その直前までYouTubeをひたすら見ているとのことでした。時には2-3時間しか寝ないということもあるようでした。スクリーンタイムは実に12時間に及んでいました。食生活も乱れており、12時、18時、23時の1日3食ということでした。身体症状だけでなく、日常生活の破綻を伴っており、VDT症候群を超えたスクリーンタイム過剰症と言える状態でした。以上より、診断は頭顔首肩こり(慢性頭痛、頸肩腕症候群、VDT症候群など)、顎関節症、食いしばり(ブラキシズム)、左手首腱鞘炎でありモヤモヤ血管治療の有効性が期待できるものの、日常生活を改善していかなければ限界があること、皮膚は一旦休ませる必要があり、鍼灸は止めていただくことをお話ししご理解いただきました。治療適応と判断し、モヤモヤ血管(病的新生血管)に対する運動器カテーテル治療(微細動脈塞栓術)を受けていただきました。

治療の所見

血管造影を行うと、首こりの主要責任血管である深頸動脈でモヤモヤ血管が濃染像として描出されました。肩こりの主要責任血管である頸横動脈その他の治療を行った後、頭部・顔面の治療を行いました。その他左上肢~手首など複数個所の治療を行い終了しました。

治療前画像:損傷を受ける、あるいは繰り返しのストレスにより発生した異常な新生血管
治療後画像:カテーテルを用いて塞栓物質を血管内に投与し新生血管を塞いだ状態
治療費用:治療する部位によって費用が異なりますのでこちらをご参照ください。
主なリスク・副作用等:針を刺した場所が出血により腫れや痛みを生じたり、感染したりすることがあります(穿刺部合併症)。造影剤によるアレルギー(皮膚のかゆみ・赤み・息苦しくなるなどの症状)が出ることがあります。

治療後の経過

しばらく音沙汰がなく、途中経過の詳細は不明でしたが、治療後3ヶ月頃に急激に改善したとのことでした。冷房が当たるだけでも痛く、冷えると激痛だったのが無くなりました。歯茎からの三叉神経の激痛が無くなり突っ張り程度となりました。頭痛も減り、たまに生じる程度になりました。顔色も良くなりました。左上肢の症状も劇的に改善しました。手首も小指側の痛みは消失しましたが、親指側の痛みは少しだけ残っていました。お灸はしなくなり、左上肢皮膚の性状はだいぶ改善しました。全体的には元の7割程度の症状が改善しました。『今までいろんなことをしても効果が無かったのに、カテーテル治療1回でこんなに良くなるのなら他の部位も治療したい』と言われました。今後、同部位の追加治療や坐骨神経痛の治療などを行う予定です。

パソコン、スマートフォン、タブレットの普及にSNS、動画サブスクリプションサービスの浸透によりVDT症候群は飛躍的に増加しました。今やスクリーンタイム過剰症という、身体的な影響を超えた包括的な概念まで叫ばれるようになりました。スクリーンタイムは1日5時間を超えると明らかに影響が出ると言われていますが、本症例では12時間、さらに就寝直前まで視聴しており、心身に強い悪影響を及ぼしていたことは容易に想像できます。現状のライフスタイルへの依存が強く形成されており、改善するのは容易ではありません。幸い、カテーテル治療が著効し、症状が劇的に改善しましたが、今後の再発が懸念されます。

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