鴨井院長による動画解説
受診までの経過
10ヶ月前に帯状疱疹に罹患しました。きっかけは外科手術を受けたことでした。その際に免疫力が低下したせいかもしれません。右目の眉の上から髪の生え際にかけて小さなぶつぶつの発疹がたくさんできました。発症当初に抗ウイルス薬を服用した後は、神経痛に対してブロック注射を10回に亘り受けましたが、全く効果がなかったため、その後は鎮痛薬や漢方薬の内服を続けていました。ヒリヒリするような痛みが寝ている時以外は常にありましたが、入浴すると少し楽になりました。少し触れただけでも強い痛みが走る、いわゆるアロディニアもみられました。発疹は治ったものの、今でも右眉の上は膨らんでおり、うっすらと赤くなっているところが一番痛みました。当院の治療を知り受診されました。
備考;以前からのうつ病のため、抗うつ薬を複数服用。
診察時の所見
頭部顔面という罹患部位、発症10ヶ月であること、うつ病があることなど治療抵抗要因が複数ありました。無効の可能性があることをご理解いただいたうえで、モヤモヤ血管(病的新生血管)に対する運動器カテーテル治療(微細動脈塞栓術)を受けていただきました。首肩こりの治療も希望されたため、併せて治療を行いました。動脈硬化が高度であり、治療にはやや難渋しましたが、時間をかけて慎重に丁寧に治療を行い、特に問題なく無事に治療を終えました。
治療の所見
頸部の治療では、深頸動脈造影でモヤモヤ血管が濃染像として描出されました。首肩こり部位の治療を行った後、頭部・顔面では、浅側頭動脈、顎動脈、顔面動脈の各血管より治療を行いました。それぞれ再現痛を認めました。
*再現痛とは、薬液投与時に普段の痛みが一定程度再現される現象です。責任血管の同定のための参考とします。
治療後の経過
治療後翌日から少し改善しました。以前は額全体が痛かったのが、額の中心側と、眉の上あたりの2箇所くらいの痛みに限局してきました。もう終わりにしたいと思っていたくらいでしたが、前向きな気持ちになれました。さらに2週間経過すると、急激に改善が進みました。9割方の痛みが改善し、多少の張りや引き攣れを感じる程度でほとんど気にならなくなりました。アロディニアも、1枚皮を貼って守られているような感覚になりました。まだ気圧の変化で少し痛みが増すことがあるほか、かゆみが残っていました。治療後3ヶ月、その後も再燃することなく順調に経過し、目の周りや鼻の奥に痛みを感じるときはあるものの、常にではなく、自分としてはほとんど気にならないレベルとのことでした。調子が良く、表情も明るくなったことから抗うつ薬の減量も検討されているほどでした。定期的なスポーツも楽しんでおられました。本症例は前述のように、一定の厳しい条件があり治療効果に懸念がありましたが、非常に良く奏功して本当に良かったと思います。難治要因がある方ほど、とにかく早い時期(可能な限り3ヶ月以内)に治療を受けていただくことをおすすめします。
時々、当院で治療を受けることについて技術的に違いが出るのかというご質問をいただくことがあります。血管内カテーテル治療は高度な医療技術の一つですが、一定の治療経験を有する医師が請け負えば、通常の局面においてはそれほどの差は出ないかもしれません。もちろん、治療時の痛みや穿刺部の管理、治療時間、放射線被ばく量、安全性、不測の事態が生じた場合に適切に対処できるかなどの点で、明確に差が出ますが、治療後の結果についてはそれほどの違いは出ないのではないかとも思います。それくらい、この治療方法のコンセプト自体が素晴らしいものだからです。一方、本症例のように高度の動脈硬化がある場合(糖尿病歴が長い、高齢、透析症例などが該当例になります)、あるいは頭部や顔面、腰部など比較的複雑な治療部位については、安全に完遂するという点で、やはり術者の知識/技量による差が出てきます。難病変では術者の技量によっては、不完全な治療となることもあり得ます。当院では、これまで長年に亘り難易度の高い血管病変の治療に携わり、培ってきた豊富な経験を持つ私自身が責任を持って治療をご提供しています。



