肩:肩こり・四十肩・五十肩

【50代:男性】肩腱板断裂手術後の遺残痛、及び再断裂による痛みに対するモヤモヤ血管治療(腱板断裂、手術後遺症、再断裂、肩関節周囲炎)

鴨井院長による動画解説

受診までの経過

荷物運搬などの重労働により1年半前から左肩が痛むようになり、MRI検査で腱板断裂と診断されました。腕が全く上がらなくなってしまい、10ヶ月前に手術を受けました。入院は1ヶ月に及びましたが、腕が挙がるようになりました。しかし、痛みがとれず、じっとしていればよいものの、動かすと痛みが生じていました。MRI検査では、手術で縫合した部分の一部に再断裂を指摘されていました。リハビリを続けていましたが、リハビリで痛みを良くすることはできないと言われ、当院を受診されました。

診察時の所見

肩関節の可動域をチェックすると、外転、屈曲で軽度の制限がありましたが、日常生活には支障をきたさないくらいに保たれていました。レントゲンでは特に異常はありませんでした。エコー検査をすると、肩関節の前方において、腱板疎部や上腕二頭筋長頭腱周囲にモヤモヤ血管を反映した異常血流信号を認めたほか、上方腱板に断裂所見を認めました。腱板断裂後、手術により可動域は改善したものの、一定の痛みが残存し、さらに再断裂に伴う炎症も相加されている状態でした。治療適応と判断し、モヤモヤ血管(病的新生血管)に対する運動器カテーテル治療(微細動脈塞栓術)を受けていただきました。

治療の所見

血管造影を行うと、胸肩峰動脈でモヤモヤ血管が濃染像として描出されました。治療後は画像上速やかに消失しました。その他複数個所の治療を行い終了しました。

治療後の経過

治療後1週間で、左上腕の痛みが消失しました。肩関節前方の痛みはまだ残っていましたが、それも1ヶ月経過するうちに無くなりました。治療後2ヶ月、元々の痛みは取れた感じがする一方で、痛くなかった部位が少し痛み、特に腕を前方に伸ばしたときに痛みがありました。術前に比べればかなり楽になっており、日常生活での支障はないとのことでした。治療後3ヶ月、痛みはほぼ消失しました。前述の痛みがまだ多少残っているものの、自然軽快が見込まれたため、終診としました。腱板断裂による痛みについては、8-9割の痛みが取れて日常生活に支障をきたさなくなった後も、完全に消失するには半年~1年かかることもあります。その内に気にならなくなり、いつの間にか治っているという感覚になる方もおられます。
本症例では、肩関節への過負荷が原因でした。手術後の再断裂リスクは新規の断裂よりも高いのですが、お仕事柄、今後も過負荷による再断裂が懸念されます。無理を重ねないよう、慎重にお過ごしいただきたいと思います。

腱板疾患の詳しい病状説明はこちら

 
 

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