腰:椎間関節炎など 【60代:男性】ゴルフのフルスイングで生じる腰痛。仙腸関節障害に対するカテーテル治療(仙腸関節障害、筋・筋膜性疼痛症候群) 2025.08.22 鴨井院長による動画解説 受診までの経過 半年前からゴルフのフルスイングで腰痛が出るようになりました。固まっている感じで、押すと痛みました。常に違和感と重だるさがあり、左脚の脛が張っている感じがしました。鍼治療に行きましたが、効果がなく、当院を受診されました。 診察時の所見 腰の可動域をチェックすると、前屈後屈とも高度の制限、側屈で中等度の制限を認めました。股関節の動きは硬いものの、可動域は保たれていました。右後上腸骨棘で圧痛を認めたほか、股関節内旋時に腰痛が誘発、骨盤固定で緩和されるなど仙腸関節障害に典型的な所見を認めました。その他の負荷テストも陽性でした。レントゲンでは、椎間板腔の狭小化、腰椎のアライメント不整や骨棘形成など中等度以上の腰椎変形を認めたほか、仙腸関節や腸骨にも骨硬化像や、骨棘形成を認めました。骨棘形成は、同部位に付着している筋肉の繰り返しの牽引が一つの原因ですが、こうしたことからも、筋実質や周囲組織の硬さが根底にあることが伺えます。腰痛は単一の原因で起こることは少なく、複数の要因が組み合わさっているのが通常です。変形性腰椎症と簡単に片づけられてしまうこともありますが、本症例の主たる原因は、仙腸関節障害、筋・筋膜性疼痛症候群(いわゆる硬さや同部の血行障害にも関係した痛み)だと判断しました。また、左側については、時々、左の脛外側に坐骨神経痛を生じるとのことでした。治療適応と判断し、併せて、モヤモヤ血管(病的新生血管)に対する運動器カテーテル治療(微細動脈塞栓術)を受けていただきました。 治療の所見 右側では、特に、腰動脈、腸骨動脈、外側仙骨動脈などで再現痛を認めました。その他左腰動脈を含めた複数箇所の治療を行い終了しました。 *再現痛とは、薬液投与時に普段の痛みが一定程度再現される現象です。責任血管の同定のための参考とします。特に腰臀部領域では、モヤモヤ血管を視認することが困難なことが多いため再現痛の確認は重要です。 治療後の経過 治療後4日くらいから改善してきました。張りが無くなり、身体が軽く感じられるようになりました。治療後2週間、ゴルフのスイングも問題なくできており順調とのことでした。治療後1ヶ月半、ぶり返すこともなく、引き続き快調に過ごせていました。その後はご遠方でもあり、受診されておりませんが、問題なく過ごされているようです。 前述のように、腰痛の原因は、通常単一ではなく複合的ですので、本来はそれぞれに対処する必要があります。カテーテル治療の場合は、血管の分布に沿って治療しますので、そうした複数の原因に対して同時に働きかけることができます。腰背部~臀部~股関節周囲までの非常に広い範囲を1回のセッションで治療することすら可能です。決定的に腰椎で神経の圧迫が起こっている場合は、外科手術が必要ですし、その代替になるわけではありませんが、そうではないほとんどの場合において、腰痛治療に非常に向いている治療方法と言えるかもしれません。究極の低侵襲治療ですねと、ある高名な整形外科医から言葉をかけていただいたこともあります。外科手術とカテーテル治療は競合するような治療方法ではなく、役割分担が異なり、むしろ補完しあうこともできる治療だと思います。状態に応じて適切な治療方法をご検討いただくとよいと思います。 仙腸関節障害の詳しい病状説明はこちら 【40代:男性】つらい肩甲骨周りの痛みはこれで解決!困ったときのモヤモヤ血管治療(肩甲骨の痛み、肩甲骨周囲炎、筋・筋膜性疼痛症候群、首肩こり) 前の記事 【50代:男性】肩腱板断裂手術後の遺残痛、及び再断裂による痛みに対するモヤモヤ血管治療(腱板断裂、手術後遺症、再断裂、肩関節周囲炎) 次の記事