腰:椎間関節炎など

【10代:女性】フィギュアスケートで生じた腰痛、練習を中断することなく治すことのできた仙腸関節障害(フィギュアスケート、腰痛、仙腸関節障害、腰椎椎間関節炎、棘間靭帯炎)

鴨井院長による動画解説

受診までの経過

1年前に、フィギュアスケートの練習で腰痛が起こり、MRI検査にて仙骨損傷を指摘されました。1ヶ月程度コルセットを装用して様子を見ていたところ、痛みが消失しましたが、練習を再開するとすぐに再発してしまいました。その後も鎮痛薬を服用してだましだまし競技を続けていましたが、4ヶ月前にMRI検査を再度受けたところ、仙腸関節に炎症がみられると説明を受けました。仙腸関節ブロックなどの注射を受けましたが、効果が無く、痛みで思うようにスケート技術の向上が進みませんでした。一方で、以前の経験から練習は中断したくないとも強く思っていました。少しでも身体の負担を軽減しようと、身体の使い方を改善したり、体幹トレーニングにも取り組んでいましたが、いかんせん痛みがとれないことには長時間続けることが困難であり悩んでいました。長時間の立位、座位で痛くなるため、日常生活でも、授業中や通学のバスの中などで痛んでいました。尚、腰椎分離症ではありませんでした。

診察時の所見

既にMRI検査にて仙腸関節障害が指摘されていましたが、身体診察の結果もそれを裏付けるものでした。それに加えて、動作による疼痛の誘発や圧痛点などの特徴から腰椎椎間関節炎(L5/S)、棘間靭帯炎(L5/S)も疑われたため、併せて病的新生血管(モヤモヤ血管)に対する微細動脈塞栓術(運動器カテーテル治療)を受けていただきました。

治療の所見

腰椎~仙骨周囲にかけて主体的に治療を行いました。腰動脈、外側仙骨動脈、腸腰動脈などでそれぞれ再現痛を認めました。
*再現痛とは、薬液投与時に普段の痛みが一定程度再現される現象です。責任血管の同定のための参考とします。特に腰臀部領域では、モヤモヤ血管を視認することが困難なことが多いため再現痛の確認は重要です。

治療後の経過

治療後2週間、痛みが半分以下(4/10程度)となりました。治療前の10というのはロキソニンを服用したうえでの状態であり、4というのはカロナールをたまに服用するくらいで対応できている状態なので、かなり改善しているとのことでした。以前は、スケートのコーチから大腿の浮腫みをよく指摘されていたそうですが、それも取れたと言われました。治療後1ヶ月、痛み止めをほぼ飲まなくてもあまり痛まなくなってきました。縄跳びが400-500回できるようになりました。コーチからは、痛みで恐怖感を生じることで思い切った動作ができなくなってしまうため、痛みを無くしてもらうことは良かったと言われました。治療後1ヶ月半、だいぶ良くなり、スケート時にも跳べるようになってきましたが、反るような動作で痛むことがありました。治療後2ヶ月、ほぼ痛みは無くなりました。ジャンプはほぼ問題なくなりましたが、レイバックスピンなどで右腰部に痛みが出ることはありました。治療後3ヶ月、痛みは気にならなくなったものの、練習時間が長くなったためか背中のこわばりを生じていました。リリース注射などを行い様子をみたところ、治療後4ヶ月頃にはその張りも気にならなくなりました。腰の調子も良く、パフォーマンスも向上しているとのことでした。その後も順調に経過し、治療後6ヶ月時点でも再発が無いことを確認しています。
元々、痛みで辛くてもあっけらかんとしていて、メンタルが強く明るい方でしたが、治っていくと、さらにはじけるような笑顔を見せてくれたのが印象的でした。
フィギュアスケートは身体負担が大きいスポーツですが、他スポーツと比べると、選手寿命が短いこともあり、多少身体を痛めるようなことがあっても、休むことなく練習を続ける
子供たちが多いそうです。当院としても、不安なく競技に打ち込めるよう、そして最大限のパフォーマンスを出せるよう少しでもお役に立ちたいと思います。

仙腸関節障害の詳しい病状説明はこちら

 
 

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