肩:肩こり・四十肩・五十肩

【モヤモヤ血管が原因だった】顎関節症の痛み(40代:女性)

鴨井院長による動画解説

受診までの経過

首肩こりで、長年、鍼治療やブロック注射を受けてきました。頭痛や顔全体のこりを合併しているほか、右顎関節近傍にも外傷性打撲をきっかけに痛みが続くようになりました。左顎関節にも痛みが伴うようになったほか、さらに顔全体のこりがひどくなり、治療についてご相談されました。

診察時の所見

首肩のこりの程度はかなり高度であり、筋緊張が強く、可動域制限も強く認められました。ほとんど上を向くことはできず、後ろを振り向くことも困難でした。頸椎椎間関節や肩甲骨周囲には強い圧痛を認めました。エコー検査では、頸椎椎間関節周囲にモヤモヤ血管を反映した異常血流信号を認めたほか、僧帽筋周囲組織の線維化も認められました。一方、頸椎はレントゲンでも明らかな異常は無く頸椎症は否定的でした。典型的な重症の首肩こり、顔こり、顎関節症と診断し運動器カテーテル治療(微細動脈塞栓術)を受けていただきました。

治療の所見

頸部の治療では、主要な責任血管である深頸動脈の血管造影にてモヤモヤ血管(病的新生血管)が造影剤の濃染像として描出されました。続いて、後頸部~後頭部に灌流する後頭動脈造影でも同様にモヤモヤ血管を認めました。慢性頭痛の方は同領域に病変を認めることが多いです。顔面の治療では、顔面動脈造影においてモヤモヤ血管を認めました。それぞれ治療後は画像上速やかに消失しました。その他複数箇所の治療を行い終了しました。治療後はすっきりした感じがしたと言われました。

治療後の経過

治療直後から、以前は凝り固まりすぎて目を開けているかどうかもわからないくらいだったのが、ぱっちり開けられるようになりました。ボールペンでいつも顔をぐりぐりと押しほぐしていたのですが、それもしなくてよくなりました。治療後2週間の再診時点では、まず顔の症状がとれてきていました。その後顔の症状はぶり返すこともなく、1ヶ月半程度で肩こりもかなり改善しましたが、首周りに関しては3ヶ月経過しても当初よりは良いものの、まだまだ『ぱっきぱき』とのことでした。しばらく注射加療を続けましたが、注射後は一過性に改善するものの、しばらくすると戻ってしまうという状態であったため、治療後6ヶ月時点で2回目のカテーテル治療を行うこととなりました。治療後2週間くらいで痛みが消失し、首の動作も改善して痛みなく広く動かせるようになりました。引き続き慎重に経過観察中です。
重症の首肩こりがさらにひどくなると、本症例のように顔面全体のこりも合併している場合があります。顎関節症がさらに拍車をかけていました。ここまでくると、いわゆる『何をやっても良くならない状態』となってしまいます。場合によっては、睡眠障害や鬱を伴うようにもなります。マッサージなどの施術でも良くならないばかりか、かえって『揉み返し』や神経障害などを誘発してしまうことがあり要注意です。こうした状態でも運動器カテーテル治療は有効ですが、こりについては本症例のように複数回の治療を要することもあります。治療後の経過を比較した場合、顎関節症の痛みを含む顔の症状から先に取れて、その後首肩こりの症状が改善します。顔面の血流が改善することで肌の改善にもつながります。以上、ご参考にしていただければと思います。

首肩こりというのは、ある一定の年齢以上になると誰でも経験しますが、重症になってくると全身の不調につながりますので侮れません。上を向きにくい、後ろを振り向きにくいなどの症状まで生じている場合は既に重症化している可能性があります。お悩みの方はどうぞお気軽にご相談ください。

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