肩:肩こり・四十肩・五十肩

【70代:男性】ゴルフのやり過ぎ?練習で痛めてついにラウンドにも行けなくなってしまったほどの右肩の痛み(上腕二頭筋長頭腱炎、有痛性腱板損傷)

鴨井院長による動画解説

受診までの経過

ゴルフの練習がきっかけで、半年前から右肩を痛めるようになりました。200球/回ほどの練習を長年続けていたのですが、球数を減らしても痛みがおさまらず、ついに練習は止めました。ゴルフのラウンドには痛みをこらえて行っていたものの、6ラウンドくらいから痛くて打てなくなるようになりラウンドにも行けなくなってしまいました。当院のことを知り、受診されました。

診察時の所見

右肩関節の可動域は比較的保たれており、後ろに手を回す動作のみ中等度制限されている状態でした。一方、全ての動作で一定の動作時痛は伴っていました。レントゲンでは腱板石灰が認められましたが、エコーで観察すると棘上筋腱の石灰沈着に合致していましたが、強い炎症を伴っている状態ではなく、他の腱板では肩甲下筋腱において小範囲の部分断裂が認められる程度でした。一方、上腕二頭筋長頭腱の観察では、一見して異常で、腫れていたほか、水も溜まっていました(上腕二頭筋長頭腱腫脹および水腫)。周囲にモヤモヤ血管を反映した異常血流信号も認められました。以上より、肩関節周囲炎の中でも特に、上腕二頭筋長頭腱炎が主体で、有痛性腱板損傷も一部関与している状態が疑われました。いずれも微細動脈塞栓術(運動器カテーテル治療)の適応ですので、治療を受けていただきました。

治療の所見

肩甲回旋動脈上行枝(本来の肩甲上動脈支配領域)、胸肩峰動脈、前上腕回旋動脈の各血管造影にてモヤモヤ血管が描出されました。それぞれ、治療後は画像上速やかに消失しました。

治療後の経過

治療後1週間くらいから改善してきて、日々消失してきました。治療後2週間の再診時には、もうゴルフの練習も再開されていました。まだ本格的に改善するのにはもう少し時間を要するため、練習については少し自重していただくようお話しました。治療後1ヶ月半、痛みは消失し、急な動きをするときにピキッとくる程度でした。本当に魔法のようだと言われました。可動域も完全に回復し、エコー観察でも水腫、異常血流信号とも消失していました。経過良好であったため、この時点で終診としました。以後も特に再発なく順調に経過されています。上腕二頭筋長頭腱炎は強い炎症を伴いますので、カテーテル治療による改善は早くから実感できることが多いです。一方、特に重労働に長年従事されてきたなどで、腱自体がかなり腫れたり大きく変性している場合は、痛みがとれても力が入りにくいなどの症状は残存することがあります。本症例の場合は、腱腫脹はあったものの、組織はまだまだ十分保たれていたため、後遺症なく完全に快復しました。腱板が概ね保たれていたことも幸いだったと思います。これからも十分、ゴルフを楽しんでいただけると思います。

上腕二頭筋長頭腱炎の詳しい病状説明はこちら

 
 

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