鴨井院長による動画解説
受診までの経過
30年前から腰痛がありましたが、5年前からは左下肢のしびれも伴い、いよいよ歩けなくなってきたため2ヶ月前に脊柱管狭窄症の手術を受けました。くしゃみでの腰痛や、左下肢症状の半分くらいは良くなりましたが、期待していたようにほとんどの痛みが取れることはなく、退院後もずっと痛みが続いていました。1ヶ月半しても痛みが変わらないため注射を受けたところ、さらに悪化してしまい普通には歩けなくなりました。骨盤ベルトをすると何とか歩けましたが、歩容が大きく悪化しているほか、夜間痛で夜も寝られず、何とかして欲しいと願い当院を受診されました。
診察時の所見
強い左腰臀部痛のため、一見して歩容不良でかばうようにびっこをひいて入室されました。動作を確認すると、前屈で比較的強い腰痛が誘発され、可動域が高度に制限されていました。その他の動作は保たれていました。股関節の動作は問題ありませんでした。腰椎椎間関節や棘間靭帯(L4/5,L5/S)で圧痛を認めたほか、後上腸骨棘で強い圧痛を認めました。レントゲンでは中等度以上の腰椎変形、軽度の股関節変形、仙腸関節の骨硬化像および開大などを認めました。脊柱管狭窄症に対する内視鏡手術後遺症でしたが、合併症ではなく、仙腸関節障害、腰椎椎間関節炎、棘間靭帯炎によるものと考えられました。局所的な圧痛が非常に明瞭であり、夜間痛もあることから良い治療適応と判断し、モヤモヤ血管(病的新生血管)に対する運動器カテーテル治療(微細動脈塞栓術)を受けていただきました。尚、左下肢症状については高度の脊柱管狭窄による神経障害後遺症である可能性があり、その場合は一定の症状が残る可能性があることをご説明しご理解いただきました。
治療の所見
内視鏡手術が行われたレベルを含む、第3腰椎レベルから骨盤内、さらに左は股関節周囲レベルまで広く治療を行いました。写真では、腰動脈、腸腰動脈、外側仙骨動脈、閉鎖動脈の各血管を示しています。
治療前画像:損傷を受ける、あるいは繰り返しのストレスにより発生した異常な新生血管
治療後画像:カテーテルを用いて塞栓物質を血管内に投与し新生血管を塞いだ状態
治療費用:治療する部位によって費用が異なりますのでこちらをご参照ください。
主なリスク・副作用等:針を刺した場所が出血により腫れや痛みを生じたり、感染したりすることがあります(穿刺部合併症)。造影剤によるアレルギー(皮膚のかゆみ・赤み・息苦しくなるなどの症状)が出ることがあります。
治療後の経過
治療後1週間で体が軽く感じられました。2週間になると歩容が改善し、杖も不要になりました。まだ左脚が重く、階段を上ることは困難でしたが、夜間痛も無くなりました。治療後2週間の診察時には、すたすたと杖なしで入室されました。左足の背屈動作は右よりも不良であり、左足裏には小石がいっぱいある感覚がするということでした。痛みが良くなった分、そうした異常感覚がより感じられるようになったようでした。治療後1ヶ月、痛みは消失しました。歩容も正常となり、左足裏の異常感覚もマッサージを受けることで少しずつ改善しているとのことでした。一方、まだ左脚に力が入りにくい感じが残っていました。痛みは劇的に改善しましたが、左脚については神経障害後遺症の他筋力低下もあると考えられました。回復の余地は十分あると期待できるため、リハビリを続けていいただいているところです。
本症例の場合、左下肢に神経障害の後遺症があるほどであり、脊柱管狭窄の手術は間違いなく必要であったものと思われます。一方、腰痛の主たる原因は脊柱管狭窄ではなく、仙腸関節障害であり、手術入院の際の安静姿位などにより悪化してしまったのかもしれません。ご本人が主張されたように、注射行為でさらに悪化したのかどうかは定かではありませんが、当院初診時にはまともに歩くことができない程のひどい痛みでした。夜間痛も生じるほどの強い炎症状態でしたので、カテーテル治療(微細動脈塞栓術)が非常に良く効き、早期から改善しました。完成された神経障害を改善するのは困難ですので、特に足裏の異常感覚は残存するものと思われますが、普通に歩けるようになり元の日常を取り戻すことができて本当に良かったです。外科手術とモヤモヤ血管治療はそれぞれ果たす役割が異なります。外科手術による神経障害などの合併症の場合は、カテーテル治療をもってしても改善は困難ですが、手術後も残っている痛み、取り切れなかった症状についてはカテーテル治療で改善できる可能性が高いです。お悩みの方は、もうできることはないと諦めず、ぜひご相談いただければと思います。


