首:首こりなど

【50代:女性】8年に及ぶ首の痛み改善したと思ったら、急性の更年期障害により眠っていた頭部・顔面・前頸部の痛みが引き起こされ追加カテーテル治療を行った実例(首肩こり、頭痛、食いしばり、前頸部痛、更年期障害)

鴨井院長による動画解説

受診までの経過

10代の頃に交通事故で頸椎捻挫を起こしたことがありました。特に後遺障害はありませんでしたが、8年前から首が痛むようになりました。痛みは常にあり、重だるく、長時間同じ姿勢でいられないほどでした。痛み止めは段々と効かなくなり、副作用も出るため止めました。整形外科ではストレートネックと言われました。通院治療の他、鍼灸や整体に通いましたが効果無く、当院を受診されました。

診察時の所見

首の動きを確認すると、後屈で軽度の可動域制限を、側屈・回旋では中等度以上の制限を認めました。頸椎椎間関節において右優位に圧痛があり、右では腕への放散痛も認めました。こりの程度は中等度以上でした。肩甲骨周囲には感覚鈍麻が認められましたが、これは比較的重症度が高い場合に見られます。重症なほど圧痛が強くなるわけではなく、感覚鈍麻も指標の一つです。レントゲンでは中等度の頸椎変形があり、ルシュカ関節(鉤椎関節)および一部椎間孔の狭小化などを伴っていました。いずれも高度ではありませんでした。軽度の頸椎症性神経根症の関与が疑われましたが、筋・筋膜性疼痛が主体のいわゆる重症首肩こりと診断しました。治療適応と判断し、モヤモヤ血管(病的新生血管)に対する運動器カテーテル治療(微細動脈塞栓術)を受けていただきました。

治療の所見

血管造影を行うと、首こりの主要責任血管である深頸動脈でモヤモヤ血管が濃染像として描出されました。治療後は画像上速やかに消失しました。肩こりの主要責任血管である頸横動脈を含めてその他複数箇所の治療を行い終了しました。

治療前画像:損傷を受ける、あるいは繰り返しのストレスにより発生した異常な新生血管
治療後画像:カテーテルを用いて塞栓物質を血管内に投与し新生血管を塞いだ状態
治療費用:治療する部位によって費用が異なりますのでこちらをご参照ください。
主なリスク・副作用等:針を刺した場所が出血により腫れや痛みを生じたり、感染したりすることがあります(穿刺部合併症)。造影剤によるアレルギー(皮膚のかゆみ・赤み・息苦しくなるなどの症状)が出ることがあります。

治療後の経過

治療後3週間、少しずつ改善し、(後ろに曲がるようになることで)うがいができるようになり驚いたと言われました。まだ頭痛が辛いとのことでした。治療後5週間、7-8割方の症状がとれてきました(2-3/10程度;術前を10 とした場合)。夜中に起きて枕の位置を変える、首を確認するなどしなくなり、朝まで寝られるようになりました。起床時に首が攣って痛いということも無くなりました。忘れられるときもありました。『痛みが改善されて、こんなに幸せな気持ちになれるとは思わなかった。本当に嬉しい。』と言われました。ジムにも入会しました。実は腰痛もあったのですが、前よりも歩けるようになったことでそれも少し緩和されました。治療後2ヶ月半、それまで順調でしたが、顎から前頸部にかけて、こわばりとこりが生じ、首の前方が痛むようになりました。以前から食いしばりがひどく、歯も削れているほどでした。その1ヶ月前に急に発症した更年期障害の影響もあるようでした。ホルモン補充療法により火照り・のぼせ・動悸は落ち着いていましたが、後頭部や後頸部にも痛みが生じており、初回治療部位に加えて頭部・顔面および前頸部の治療を行うこととしました。血管造影を行うと、後頭動脈、顔面動脈でモヤモヤ血管が濃染像として描出されました。顎動脈造影では右頬部(ほお)にモヤモヤ血管が同様に描出されました。治療後は画像上速やかに消失しました。その他前頸部など複数箇所の治療を行い終了しました。治療後2週間、右頸部の痛みがだいぶ楽になりました。右肩甲骨上方にべったりとへばりついた感じがあったのですが、その面積が随分と小さくなりました。治療当日は拍動性の頭痛が続いたものの翌日には無くなり、雨の日の頭痛が少し楽になりました。顔についてはまだ変化はありませんでした。治療後1ヶ月半、右肩甲骨のへばりつきは無くなりました。頭痛が軽くなり、ほぼ無くなりました。特に、雨の前日などは強かったのですが、それが消失しました。前かがみの姿勢から立ち上がる時にあった疼くような頭痛も消失しました。顔については血行が改善し、色が明るくなりました。目の裏の疼き、視神経の痛みのようなものがあったのですが、それが消失しました。僧帽筋や胸鎖乳突筋の症状はもう一歩というところでしたが、ジョギングやピラティスに取り組めるようになりました。全体的に本当に楽になり、2回目の治療を受けて良かったと言われました。治療後2ヶ月半、毎日のジョギング(1時間)やピラティスが奏功し、カテーテル治療を検討していたほどの腰痛が随分と楽になりました。胸鎖乳突筋や頸部後方の痛みのみ残っていました。治療後3ヶ月半、残りの痛みが減ってきたものの、まだ頸部やや後方には一定の張りがありました。注射加療でそうした張りも改善するようになり、腰痛も付き合っていける程度となったため、一旦終診となりました。ヨガ・ピラティス・ウォーキング・ジョギングは続けておられるとのことであり、さらなる改善が期待できます。

当初は難治性の首肩こりが主体であり治療により軽快していましたが、突然発症した更年期障害を契機に、治療標的としていなかった顎~前頸部、顔面痛、頭痛および、それぞれのコリが顕在化しました。重症の首肩こりの方が、頭痛や食いしばり、頭こり、顔こり、顎関節症などを合併している例は少なくありませんが、このような経過は珍しいです。突然発症した更年期障害の影響が非常に強く認められた症例でした。その後は順調に経過されていますが、引き続き慎重にフォローアップしていきたいと思います。もう一つ注目すべきことがありました。通院中は腰痛のカテーテル治療も計画していたほどでしたが、首肩こりの治療により身体が楽になったことで積極的に運動に取り組めるようになり、自力で腰痛を緩和することができました。運動療法は地道ですが、確実に良い効果を生み出してくれます。首肩の影響は大きく全身に及ぶため、複数個所の問題を抱えている場合は、(程度にもよりますが)まず首の治療を受けることをおすすめします。

関連記事