鴨井院長による動画解説
受診までの経過
1年2ヶ月前から左手首が痛むようになりました。腱鞘炎かと思い放置していましたが、5ヶ月前のゴルフ後、手が腫れあがったため病院を受診したところ、キーンベック病と診断されました。当初は握力が無くなり鍋も持てないほどでしたが、PRP療法を受けて何とか持てるようになりました。しかしながら、ゴルフの翌日や捻る動作をすると腫れあがり痛みが出ました。ゴルフを続けたいなら手術をしたほうがよいと言われましたが、手術は絶対に受けたくないため他の治療方法を求めて当院を受診されました。
診察時の所見
前医のMRI検査では、T1強調画像で低信号、脂肪抑制T2強調画像で高信号を認めており、キーンベック病の診断でしたが、病期としては保存的治療が可能な範囲でした。治療適応と判断し、モヤモヤ血管(病的新生血管)に対する運動器カテーテル治療(微細動脈塞栓術)を受けていただきました。
治療の所見
血管造影を行うと、橈骨動脈および骨間動脈にてモヤモヤ血管が濃染像として描出されました。治療後は画像上速やかに消失しました。その他複数箇所の治療を行い終了しました。
特に治療中に痛むことはありませんでした。
治療前画像:損傷を受ける、あるいは繰り返しのストレスにより発生した異常な新生血管
治療後画像:カテーテルを用いて塞栓物質を血管内に投与し新生血管を塞いだ状態
治療費用:治療する部位によって費用が異なりますのでこちらをご参照ください。
主なリスク・副作用等:針を刺した場所が出血により腫れや痛みを生じたり、感染したりすることがあります(穿刺部合併症)。造影剤によるアレルギー(皮膚のかゆみ・赤み・息苦しくなるなどの症状)が出ることがあります。
治療後の経過
治療後1週間~10日くらいは楽でしたが、その後再燃しました。治療後1ヶ月、まだ
強い痛みがあり、むしろ治療前よりも痛いくらいに感じていました。整形外科では改めて手術を勧められました。不安な毎日でしたが、1ヶ月半にさしかかる頃に急に改善してきて痛みが当初の半分くらいになりました。しかしながら、ゴルフクラブを持ったり、少しスイングしてみたりすると痛みが増しました。握力は右20あるのに対して左は8くらいでした。外科手術だけは受けたくないと考えているものの、半年して良くならなければ受けるしかないかなともこぼされていました。治療後3ヶ月、痛みがかなり楽になり、握力は戻らないが調子よく過ごせているとのことでした。全体的に元の7割方の症状が改善し日常生活では気に病むことが無くなりました。整形外科では年齢的に手術はお勧めできないし、することはできるがそれにより痛みが改善するかどうかはわからないと言われ、固定を指示されました。残存症状の加療を希望されましたので、動脈注射治療を追加することとしました。1ヶ月後、さらに痛みが改善し、手首を動かせるようになりました。それとともに握力も少しずつ回復してきました。8割方の症状が改善しましたが、まだゴルフを気兼ねなくできるようになるかどうかはわかりません。引き続き慎重にフォローアップしているところです。
キーンベック病は早期であれば保存的治療方針、進行すると外科手術適応となる疾患です。カテーテル治療は外科手術の代わりになるわけではありませんので、月状骨が扁平化して周囲の関節変形を伴うようになると、外科手術を行う必要が出てきますが、それまでの境界領域において、特に手関節の機能は保たれていて痛みのコントロールを何とかできればよいという段階においては有力な治療選択肢です。重要なのは早期に発見することです。早期ではレントゲンで異常を検出できません。手首の疾患の画像診断にはMRI検査が必須です。不調を感じたら我慢しすぎず、早めに精査を受けていただきたいと思います。


