手:ばね指など 【60代:男性】痛くてドアノブも回せない、5年以上続いた手首の痛み。腱鞘炎に変形性手関節症を合併した一例(尺側手根伸筋腱の腱鞘炎、変形性手関節症、ドゥケルバン腱鞘炎) 2025.11.10 鴨井院長による動画解説 受診までの経過 手先をよく使う仕事(巧緻作業)に従事しているほか、趣味で野球やゴルフをされる方です。5年前から右手首が痛むようになりました。使わなければ痛くはならないものの、使うと必ず痛くなりました。ドアノブを回す動作でも痛み、ひどい時は動かせなくなるほどでした。サポーターで固定したりして何とか付き合ってきました。医療機関は度々受診してきましたが、都度レントゲンを撮っても異常は見られず、湿布を処方されるのみでした。この繰り返しで5~6年経過してきましたが、当院の治療を知り受診されました。 診察時の所見 手首の痛みは親指側、小指側とも痛くなるとのことでした。動作確認では、回内回外で特に痛みが誘発されました。背屈はできるものの、一定の可動域制限がありました。エコー検査をすると、尺側手根伸筋腱の腱腫脹および、腱鞘肥厚を認めました。橈側ではより軽度でしたが、一定の腱鞘炎が見られました。更に、手関節橈側において、骨表層不整および低エコー領域を認め、同部位の変形性変化/損傷/変性が示唆されました。レントゲンでは、尺骨に異常は見られなかったものの、手関節の関節裂隙狭小化、および隣接橈骨の骨硬化像を認めました。以上より、尺側手根伸筋腱の腱炎/腱鞘炎、ドゥケルバン腱鞘炎、手関節における変形性関節症と診断しました。治療適応と判断し、モヤモヤ血管(病的新生血管)に対する運動器カテーテル治療(微細動脈塞栓術)を受けていただきました。 治療の所見 血管造影を行うと、尺骨動脈で尺側手根伸筋腱および手関節に一致して、モヤモヤ血管が濃染像として描出されました。骨間動脈でも手関節周囲に、同様にモヤモヤ血管を認めました。治療後は画像上速やかに消失しました。橈骨動脈の治療も行い終了しました。 治療後の経過 治療後2週間ではまだ大きな変化はありませんでしたが、治療後2ヶ月の再診時には大幅に改善し、元の痛みの1/10程度となっていました。しばらく止めていたゴルフもしたいくらいと言われました。その後も再発することなく順調に経過し、治療後6ヶ月時点では、普段の痛みはゼロ、無理をすると痛むことはあるがそれでも当初の1/10とのことでした。腱鞘炎のみではなく、手首の変形性関節症も伴っているため、使い過ぎにはくれぐれも注意していただくようお話しし、終診としています。 腱鞘炎の詳細はこちら 【50代:女性】長い距離を歩くと痛くなる、登山家に生じた両膝の痛みに対するモヤモヤ血管治療(膝蓋下脂肪体炎、腸脛靭帯炎) 前の記事