手:ばね指など

【40代:女性】繰り返すステロイド注射でもよくならなかったドゥケルバン腱鞘炎に対するモヤモヤ血管治療(ドゥケルバン腱鞘炎、ドケルバン腱鞘炎、手首親指側の痛み)

鴨井院長による動画解説

受診までの経過

9ヶ月前に床に手を着いた際に、右手首を痛めてしまいました。整形外科で診てもらうと、腱鞘炎のほか、CM関節症も指摘されました。ステロイド注射を受けると一旦は改善するのですが、1ヶ月ほどで元に戻ってしまうため、それ以降は注射を止めました。しかしながら、症状は増悪し、痛みは前腕まで広がりました。安静にしていても痛みが出るようになり、冷えるとさらに痛みが増しました。ステロイド注射以外の治療方法を求めて当院を受診されました。

診察時の所見

尺屈で痛みが誘発され、手首の親指側の腱をエコーで観察すると、腱鞘の腫脹および周囲の(モヤモヤ血管を反映した)異常血流信号を認めました。腱は保たれていました。典型的なドゥケルバン腱鞘炎の所見です。一方、CM関節の変形はそれほど目立たず、同部位についても腱鞘炎が主体と考えられました。治療適応と判断し、モヤモヤ血管(病的新生血管)に対する運動器カテーテル治療(微細動脈塞栓術)を受けていただきました。

治療の所見

血管造影を行うと、橈骨動脈造影で前述の腱鞘肥厚部と、CM関節周囲に一致してモヤモヤ血管が濃染像として描出されました。治療後は画像上速やかに消失しました。その他前腕を含む複数箇所の治療を行い終了しました。

治療前画像:損傷を受ける、あるいは繰り返しのストレスにより発生した異常な新生血管
治療後画像:カテーテルを用いて塞栓物質を血管内に投与し新生血管を塞いだ状態
治療費用:治療する部位によって費用が異なりますのでこちらをご参照ください。
主なリスク・副作用等:針を刺した場所が出血により腫れや痛みを生じたり、感染したりすることがあります(穿刺部合併症)。造影剤によるアレルギー(皮膚のかゆみ・赤み・息苦しくなるなどの症状)が出ることがあります。

治療後の経過

治療後2週間で右手首橈側の痛みは半減しました。他の部位の痛みはほぼ消失しました。ハサミも使えるようになりました。その後も再燃することなく順調に経過され、治療後3ヶ月では9割方の痛みは改善しました(1/10程度)。仕事で手首を酷使するため、その際には多少痛むことがあるものの休めば治ります。エコー検査では腱鞘肥厚は残っているものの、炎症所見は消失していました。残存症状についても自然経過で解消されることが見込まれたため終診としました。安静時にも生じるほどの痛みであり、前腕にもその痛みが広がるなど、重症度の高い腱鞘炎でした。モヤモヤ血管治療によりほぼ完治しましたが、画像では腱鞘肥厚などは残る場合が多いです。これは痛みが消失した場合でも同様です。やはり、人間の腱や腱鞘、靭帯というのは消耗品であり、加齢により少しずつ変性し、傷んでいきます。残ったものを大切に使うという考え方も重要です。これまでよく頑張ってきた手首に感謝しながら、大切に使っていっていただきたいと思います。尚、ステロイド注射を繰り返すと組織を傷める懸念があります。使用する場合は、その量や頻度、そして何より使用目的を厳密に管理、判断する必要があります。

ドケルバン病の詳細はこちら

 
 

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