腰:椎間関節炎など

【60代:女性】腰椎側弯症の女性に生じた耐え難い腰痛、および坐骨神経痛(腰椎側弯症、固定術後、仙腸関節障害、坐骨神経痛、腰椎神経根症、膣痛)

鴨井院長による動画解説

受診までの経過

3年半ほど前に、腰椎側弯症の手術を受けました。以後特に症状なく過ごせていましたが、半年ほど前から左側の臀部~脚の付け根に激痛を生じるようになりました。特に起床時がひどく、起きた後しばらくは激痛で歩けないほどでした。時々、ぎっくり腰になることもありました。整形外科やペインクリニックなどで、ブロック注射やトリガーポイント注射を10回ほど受けましたが、効果が得られませんでした。痛みはひどくなるばかりで、鼠径部も痛くなってきました。リハビリをすすめられてウォーキングマシンを使っていたら、さらに痛みが増して歩行時にも痛むようになりました。当院のことを知り受診されました。

診察時の所見

腰の動きをみてみると、前屈は保たれていたものの他は中等度以上の制限がありました(側弯症手術後の影響もあります)。左回旋時に疼痛が誘発され、左股関節の外旋時には後方の痛みが誘発されました。内旋時にも後方の痛みを生じる一方で骨盤固定により緩和されるほか、上後腸骨棘(PSIS)近傍に局所性圧痛を認めるなど仙腸関節障害を疑うような所見を認めました。他にも腰椎椎間関節や梨状筋でも強い圧痛を認めるなど、複合的な要因が想起されました。いずれも左優位でした。レントゲンでは、脊椎側弯症の術後状態であり、一部固定術が行われていることがわかりましたが、胸腰椎の高度の側弯は残存していました。また、仙腸関節においては左右とも比較的高度の骨硬化像を認めました。左右の脚長差もあり、仙腸関節障害は必発と言っても過言ではない構造異常が一見して把握できました。鼠径部の痛みなどは、仙腸関節障害の関連痛としても説明可能です。以上より、左優位の仙腸関節障害、腰椎椎間関節炎、および腰椎由来の神経根症状による腰臀部痛(いわゆる坐骨神経痛)と判断し治療を受けていただきました。

治療の所見

腰椎近傍、腸腰筋および腰椎仙骨移行部、仙腸関節近傍、仙腸関節、股関節周囲と、それぞれ原因となる血管に対して治療を行いました。腰臀部痛については、通常モヤモヤ血管が画像上良く見える部位ではないため、掲載しておりません(骨盤部位は組織が厚く、ガスを含む腸管があること、モヤモヤ血管の分布する部位が比較的深部にあることなどがその要因です。写りにくいのであって存在しないわけではありません。尚、見えなくても治療に支障はありません。)。

治療後の経過

治療後2週間、ひどい痛みはとれてきました。治療後1ヶ月、6割方の痛みはとれてきました(4/10程度)。プールの中での運動をおすすめし、週に2回通うようになりました。治療後2か月、起床時の痛みは劇的に改善しました。むしろ、起きてからしばらくすると痛くなってくるといった具合で以前と反対になりました。右側の痛みは完全に消失しました。治療後3ヶ月、起床時の痛みは消失しましたが、まだ仰向けに寝ると痛みが出ました。左足に重心をおくと、左臀部や骨盤後部が痛く感じました。また、歩くと重だるく感じていました。治療後4ヶ月、だいぶ改善し、歩きはじめの痛みなどもほぼ無くなりました。コルセットをしていると楽ですが、なしでは1km歩くと悪くなってきました。相変わらず、仰向けに寝ると痛むため、横向きに寝ていました。大幅に楽になっているものの、もう少し改善したいという希望があり、2回目のカテーテル治療を行いました。通常、追加治療を希望される場合は、治療後3ヶ月以上の時点で検討しています。この際、実は1年前から膣の入り口の痛み(左半分のみ)や尿漏れについて悩んでおり可能なら併せて治療を受けたいという希望があったため、同部位を含めて拡大治療を行いました。2回目治療から1ヶ月後、膣の痛み・違和感がなくなりました。排尿にともなう障害も改善されてきました。仰向けで寝ると左臀部~足が痛くなる症状はまだ残っていました。治療後2ヶ月、水泳を続けることで仰向けに寝られるようになってきたとのことでした。残る神経根症状については、高度の側弯をともなっていることから改善が難しいかと懸念していましたが、ご自身で運動を継続されることで解消されてきたのは本当に良かったですし、素晴らしいと思いました。運動療法は継続できると着実に効果が期待できますが、多くの方は中々続けることができません。良い状態を維持できるよう、引き続き一緒に取り組んでいきたいと思います。

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