鴨井院長による動画解説
受診までの経過
以前から首肩こりがありましたが、3ヶ月前から増悪し、動かすと首がきしむように感じるようになったため当院を受診されました。
診察時の所見
首の可動域を確認すると、側屈や回旋動作で中等度以上の制限がみられました。頸椎椎間関節や肩甲骨周囲に圧痛を認めました。触診では、こりの重症度は最重症レベルでした。エコー検査では、僧帽筋周囲組織の線維化が左側優位に進行していました。レントゲンでは、頸椎は保たれているものの、後頸部の項靭帯の石灰化を認めました。頸椎症は否定的であり、首肩こり(頸肩腕症候群)の診断でモヤモヤ血管の治療適応と判断し、モヤモヤ血管(病的新生血管)に対する運動器カテーテル治療(微細動脈塞栓術)を受けていただきました。
治療の所見
血管造影を行うと、首こりの主要責任血管である深頸動脈で、左側優位にモヤモヤ血管が濃染像として描出されました。治療後は画像上速やかに消失しました。その他肩こりの血管など複数箇所の治療を行い終了しました。
治療前画像:損傷を受ける、あるいは繰り返しのストレスにより発生した異常な新生血管
治療後画像:カテーテルを用いて塞栓物質を血管内に投与し新生血管を塞いだ状態
治療費用:治療する部位によって費用が異なりますのでこちらをご参照ください。
主なリスク・副作用等:針を刺した場所が出血により腫れや痛みを生じたり、感染したりすることがあります(穿刺部合併症)。造影剤によるアレルギー(皮膚のかゆみ・赤み・息苦しくなるなどの症状)が出ることがあります。
治療後の経過
治療後1週間、まだはっきりとした変化は感じられないものの、肩甲骨の周りが動くようになった感じがしました。治療後2週間、肩甲骨がよく動くようになりました。頭痛はまだ変化がありませんでした。治療後1ヶ月、まだ首の重い感じが残っていました。治療後1ヶ月半、頭痛が軽減されてきたものの、首肩はまだドヨーンとしていました。効果は十分感じられたものの、一定の症状が残っていること、実は顎関節症(カクカクいっている)や食いしばり、頭重感もあるため、頭部顔面の治療も併せて追加治療を受けたいとご希望されたため、治療後3ヶ月で追加治療を行いました。まず、前回最も悪かった左頸部の血管造影を行いました。すると、モヤモヤ血管は大幅に減少し、血行が劇的に改善している様子が見て取れました。病的新生血管がモヤモヤ血管のような形で視認できるのは一部であり、この状態でも全く無いわけではありません。初回治療後も必ずある程度は残存していますし、新たに生じてくるものもあります。追加治療を行う意義は、初回時には到達しにくかった部位に薬液が到達できる利点も含めて、病的新生血管をさらに減少させるところにあります。前回同様部位を治療した後、続いて頭部・顔面の治療に入りました。左顔面動脈や右後頭動脈にてモヤモヤ血管が濃染像として描出されました。治療後は画像上速やかに消失しました。その他複数箇所の治療を行い終了しました。追加治療から1ヶ月後、常にあった頭重感が無くなりました。治療後2週間くらいから改善したようですが、すごく楽になったので、いつから楽になったかも覚えていないほどと言われました。しばらく他部位の治療のために通院を続けていましたが、首肩も同様に改善が進み、加療不要となりました。元々積極的に運動をされる方で、ご自身で再発予防に取り組まれていたこともあり、特にぶり返すことなく、治療後5ヶ月で終診となりました。
重症の首肩こりに対して2回のカテーテル治療を要した症例でした。本来、モヤモヤ血管に対するカテーテル治療は2回行ったほうが効果的ですが、現状ではコスト面の懸念があること、多くの場合、単回の治療でも満足できるレベルに到達することから、当初から複数回の治療計画を立てることは稀です。一方、初回治療後に十分治療効果を確認できた後、残存症状に対して追加治療を希望される方もおられます。代表的な症状は首肩こりや腰痛です。これらは、その成り立ちからして積年のものであり、しつこい症状であることが多く、他疾患に比べると2回の治療を行うことが出てきます。そのメリットがより大きいとも言えるでしょう。追加治療のタイミングについては、2ヶ月~3ヶ月が一つの目安です。それまでは、自然経過でもさらに改善することが期待されるのと、間隔を空けすぎると追加治療意義が薄れていくと考えています。尚、非常に稀ですが、非常に炎症が強い病態であったり、構造的な異常が強く保存的治療として最大の効果を狙いに行ったりする場合などは、当初から複数回治療をご提案し、1か月後に追加治療を行うこともあります。同じ病気でも個々により病態は大きく異なりますので、気になる方は個別にご相談いただければと思います。
頭部・顔面はカテーテル治療の有効性が高い部位の一つです。単回の治療で十分なことが多いです。頭痛・頭重感については首肩こり治療を行うだけでも改善される場合がありますが、併せて治療するほうがより効果的です。動脈注射治療と組み合わせることも可能です。一方、顎関節・食いしばり(ブラキシズム)の治療はカテーテル治療が必要です。



